
今回のお車はメルセデスベンツ E400 4MATIC ステーションワゴン(S213)。Eクラス(W213系)のステーションワゴンで、神奈川県横浜市のお客様からのご依頼です。
エンジンが温まるとDに入らず、すぐにNへ戻ってしまう症状。かけ直すと一時的に戻るものの、3速から変速しない状態も出ていました。原因は9Gトロニック内部のプレッシャーセンサーの不良です。ミッション交換やユニット交換はせず、センサーを単体で交換して改善。費用も、ディーラーの見積もりより大幅に抑えられています。
車両情報・ご依頼内容
● 車種:メルセデスベンツ E400 4MATIC ステーションワゴン(S213)
● 年式:平成30年1月
● 型式:RBA-213271
● エンジン:M276(ガソリンターボ)
● ミッション:9Gトロニック(725.0)
● 走行距離:85,354km

インターネットで当社を見つけていただき、初めてのお問い合わせでした。
走り始めは問題ないものの、少し走って温まってくると症状が出るとのこと。Rには入るのに、Dに入れるとすぐNに戻ってしまい、なかなか1速に入らない状態です。Pに戻す、Nを経由してからDに入れる、エンジンをかけ直すといった対処を、何度も繰り返されていたそうです。
エンジンをかけ直すと一時的には元に戻るものの、走っているうちに3速のまま変速しない状態に。時間がたつにつれて3速にも入らなくなり、Nばかりの状態へと悪化していったといいます。
近くのメルセデス修理専門店2店舗にも相談されたところ、バルブユニット不良の可能性が高く、部品が単体で供給されていないため、ディーラーでの修理を勧められていたとのこと。
ディーラーでは、バルブボディに付いているTCU(電子制御部)の交換で、50万〜60万円ほどの見積もりが出ていたそうです。ミッション本体の交換となれば、費用はさらにかさむところ。
ご加入の自動車保険のロードサービスを利用し、当社の積載車で横浜市までお引き取りに伺っています。
診断と原因特定
さて、まずは症状の確認からです。
試運転では、お問い合わせいただいた内容どおりの症状をはっきりと確認。かなり深刻な状態。
続いて診断機(XENTRY)で、各コントロールユニットを点検していきます。9速トランスミッションのコントロールユニット(VGS)に記録されていたDTCは、次の1件でした。
● P073E00 リバース・ギヤにシフトできません。

ここで注目したいのが、コードの名前と実際の症状のずれ。P073E00は「リバースにシフトできない」という内容ですが、今回のお車はRには入り、Dで不具合が出ていました。DTCの名前だけで判断すると、原因を見誤るおそれがあるわけです。
そこで、診断機で実際のデータも確認。データからもプレッシャーセンサーの具合が確認でき、試運転で出た症状とも合致しました。
プレッシャーセンサーは、9Gトロニック内部の油圧の情報をTCU(トランスミッションコントロールユニット)へ伝える部品。この情報が正しく届かなくなると、変速の制御がうまくいかなくなります。
プレッシャーセンサーの不良で間違いないので作業を進めてまいります。
作業内容
実はこのプレッシャーセンサー、メーカーからの単体での部品供給はなし。通常はTCU(電子制御部)ごとの交換になる部品です。当社ではバルブボディを取り外し、センサーだけを単体で交換していきます。部品は、品質を確認できている取引先から仕入れた優良品(SMP132-375)を使用。
ATFの排出とオイルパンの取り外し
まずはATFの排出から。


オイルパンを外すと、バルブボディが姿を現します。

バルブボディの取り外し
続いて、バルブボディを車両から取り外します。

プレッシャーセンサーが付いているのはTCU側。ここからは、TCUをバルブボディから切り離しての作業です。

プレッシャーセンサーの単体交換
さて、いよいよプレッシャーセンサーの交換へ。

センサーを取り外し、新品と並べてみました。見た目はほとんど変わりませんが、この小さな部品が今回の症状の原因だったわけです。

新しいセンサーを取り付け、端子を確実に接続。


バルブボディとオイルパンの組み付け
TCUとバルブボディを組み付け、車両へ戻します。

ボルトはトルクレンチで、規定値どおりに締め付け。

オイルパンは、ATFフィルター一体型の新品に交換。


仕上げ・確認作業
組み付けが終わったら、ATFの充填へ。今回はトルコン太郎を使って、規定量のATFを充填しました。

9Gトロニックの油量調整は、診断機の指示に従って進めるのが基本。XENTRYで油温とエンジン回転数の条件を満たしたうえで、ATFのレベルを点検する流れです。


最後に試運転で確認していきます。
結果は良好。エンジンが温まった状態でもNに戻ることはなく、嘘のようにスムーズにDレンジで走り出します。交換後の診断でも、DTCはありませんでした。
これで修理は完了。
よくあるご相談
Q. 温まるとDに入らずNに戻るのは、ミッション本体の故障ですか?
今回のお車は、ミッション本体ではなく、内部のプレッシャーセンサーの不良が原因でした。同じような症状でも原因は車ごとに異なるため、試運転と診断機のデータで絞り込むことが大切です。
Q. P073E00が出たら、ミッションやユニットの交換が必要ですか?
今回はP073E00が記録されていましたが、センサーの単体交換で改善しています。ディーラーではTCUの交換で50万〜60万円ほどの見積もりだったところ、費用は大幅に抑えられました。
Q. エンジンをかけ直すと直るなら、乗り続けても大丈夫ですか?
今回のお車も、かけ直すと一時的に元に戻る状態でした。ただ、時間がたつにつれて3速にも入らなくなり、最後はNばかりの状態に。症状が出始めた段階での点検をおすすめします。
Q. プレッシャーセンサーは部品として手に入りますか?
メーカーからの単体供給はなく、通常はTCU(電子制御部)ごとの交換になります。当社では、品質を確認できている取引先から仕入れた優良品で、センサーを単体で交換する方法をご提案しています。
Q. 遠方からでも依頼できますか?
今回は神奈川県横浜市のお客様でした。ご加入の自動車保険のロードサービスを利用し、当社の積載車でお引き取りしています。ロードサービスの利用条件はご加入の保険によって異なるため、まずはお気軽にご相談ください。
今回の作業まとめ
● 車両:メルセデスベンツ E400 4MATIC ステーションワゴン(S213)/85,354km
● 症状:温まるとDに入らずNに戻る(Rには入る)、3速から変速しない。かけ直すと一時的に戻る
● DTC:P073E00 リバース・ギヤにシフトできません
● 原因:9Gトロニック内部のプレッシャーセンサーの不良
● 作業:プレッシャーセンサー(SMP132-375)単体交換/オイルパン(ATFフィルター一体型)交換/トルコン太郎でATFを規定量充填/XENTRYでATFレベル点検
● 費用:ディーラーの見積もり(TCU交換で50万〜60万円ほど)より大幅に抑えて修理
● 確認:試運転で症状の改善を確認、交換後のDTCなし
ご依頼ありがとうございました。
丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。
急いで作業を行えばヒューマンエラーにもつながりますし、ミスを無くすためにも1〜2週間程度のお時間をいただいております。
どうぞご協力お願いいたします。
● 初めての問い合わせで不安な方
● 車の修理をしたいけど迷っている方
● どこのお店に依頼していいかわからない方
経験豊富な整備士が適切なアドバイスをいたします、遠慮なさらずにお問い合わせください。
同じ症状でお困りの方へ
「Dに入らない」「変速ショックが大きい」「ギアが固定される」などの症状は、ミッション本体の故障と思われがちですが、実際にはセンサーやバルブボディまわりが原因のケースも少なくありません。
車種・型式/症状の出る条件(いつ・どんな場面)/警告灯や表示内容/DTC(分かれば)をお知らせいただくとご案内がスムーズです。
▼ 輸入車ATの修理事例はこちら
👉 輸入車AT整備ラボ(株式会社Auto Planet)
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「Dに入らない」「Nに戻る」といった輸入車のATトラブルは、ミッション本体ではなく、内部のセンサーや電子制御部品が原因のケースもあります。当社では、診断で原因を絞り込み、できる限りピンポイントの修理をご提案します。
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