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メルセデスベンツGLC250 Dに入らず3速固定の症状|9Gトロニック プレッシャーセンサー単体交換【X253/P073E00・P07B700】

今回のお車はメルセデスベンツGLC250(X253)。神奈川県横浜市のお客様で、走行距離は190,000kmです。

エンジンが温まるとDに入らずNに戻ってしまい、Dで走り出しても3速から変速しない症状。他店でATFとストレーナーを交換しても改善しなかった一台です。XENTRYにはP073E00とP07B700が記録されており、原因は9Gトロニック内部のプレッシャーセンサーの不良。センサーを単体で交換して改善しています。

メルセデスベンツGLC250 X253 入庫時

ご入庫いただいたGLC250。AMGラインの黒ボディ、走行190,000kmの個体

車両情報・ご依頼内容

● 車種:メルセデスベンツ GLC250(X253)
● 型式:DBA-253946
● 初年度登録:平成28年3月
● ミッション:9Gトロニック(725.0)
● 走行距離:190,000km

エンジンが温まってくると、Dに入れてもNに戻ってしまうとのこと。Dで走り出せても、ガコンと衝撃が出たあと3速のままギアが上がらない状態です。一方で、バックには普通に入っていました。

一週間ほど前に他店でATFとストレーナーを交換されたものの、症状は改善せず。当店のホームページを見つけて、お電話をいただきました。どこに相談すればよいか迷われていたそうで、できるだけ早く見てほしいというご依頼です。

診断と原因特定

まずはXENTRY(メルセデスベンツの診断機)で、現在の状況を確認していきます。

検出されたDTC

GLC250 入庫時DTC P073E00 P07B700 U012600

入庫時のDTC。VGS(9速トランスミッション・コントロール)に2件のエラーが記録されている

検出されたDTCは次の3件でした。

● P073E00 リバース・ギヤにシフトできません
● P07B700 プレッシャー・センサのシグナルが妥当でありません
● U012600 ステアリング・コラム・モジュールとのコミュニケーションに機能障害

さて、ここで手がかりになるのがP07B700。コード名のとおり、9Gトロニック内部にあるプレッシャーセンサーの信号が、妥当ではないと判断されたことを示すコードです。お客様からうかがった「温まると症状が出る」という状況とも合わせて、プレッシャーセンサーを中心に原因を絞り込んでいきました。

ちなみに、当店で修理したE220d(W213)の事例で記録されていたのはP073E00とP060600で、P07B700は出ていませんでした。E400(S213)の事例でも、記録されていたのはP073E00の1件だけ。それでも原因は、どちらも同じプレッシャーセンサーの不良でした。P07B700が出ていれば大きな手がかりになりますが、出ていないからといってセンサーが無関係とは限らないわけです。

U012600は別系統として切り離し

U012600は、ステアリング・コラム・モジュールとの通信に関するコード。シフトの症状とは別系統のコードのため、今回はひとまず切り離して診断を進めています。

P073E00なのにバックには入る理由

ここで一点、誤解を防ぐための補足を。「P073E00 リバース・ギヤにシフトできません」というコード名だけを見ると、「バックには普通に入るから違うのでは?」と感じる方もいらっしゃるかと思います。実際、今回のお車もバックには普通に入っていました。

当店の事例でも、Rに入らなかったのはE220dだけで、GLC250とE400はRには入っていた状態。コード名と実際の症状は、そのまま一対一で対応するとは限らないということです。コード名だけを追いかけると、遠回りになってしまいます。

ATF・ストレーナー交換で直らなかった理由

今回のお車は、他店ですでにATFとストレーナーを交換済み。点検してみても、ATFの量や汚れに異常はありませんでした。

原因はATFの劣化や量ではなく、ミッション内部のセンサー。そのため、油脂類のメンテナンスだけでは解決しなかったわけです。ATFに問題がないのに不調が続くときは、電子制御の領域を疑って診断機で切り分ける必要があります。

プレッシャーセンサーは、9Gトロニック内部の油圧の情報をTCU(トランスミッションコントロールユニット)へ伝える部品。ここの信号が正しく届かなくなると、TCUは適切な変速の制御ができなくなります。Dに入れてもNに戻る、3速から変速しないといった今回の症状も、この流れで説明がつくところ。

プレッシャーセンサーの故障で間違いないので、作業を進めてまいります。

作業内容

ATFの排出とバルブボディの取り外し

車両をリフトアップ。まずはATFの排出からです。

9Gトロニック ATF排出 SST レベルパイプ

レベルパイプにSST(特殊工具)を挿入してATFを排出

9Gトロニックは下面にレベルパイプがあり、SSTで4段階のポジションを切り替えながら油量を扱う構造。専用工具なしには触れません。

続いてオイルパンを取り外し、コントロールバルブボディを切り離していきます。

9Gトロニック オイルパン外し後

オイルパンを外した状態。多数のソレノイドが並ぶコントロールバルブボディが見える

9Gトロニック コントロールバルブボディ 取り外し

取り外したバルブボディ。油圧回路と電子制御が一体になった9Gトロニックの中枢部

このユニットの中に、今回の故障箇所であるプレッシャーセンサーが組み込まれています。

9Gトロニック コントロールバルブボディ単体

マニュアルでの表記は「エレクトロハイドロリックコントロールユニット」

プレッシャーセンサーの単体交換

このプレッシャーセンサー、メーカーからは単体での部品供給がありません。本来であればバルブボディごとの交換になる部品で、その場合はとても大きな費用負担になってしまいます。そこでお客様とご相談のうえ、センサー単体での交換で対応しました。

プレッシャーセンサー 取り付け部

プレッシャーセンサーの取り付け部

プレッシャーセンサー 取り外し後 3端子

センサーの蓋を外すと、3端子のソケットが現れる

センサー単体での交換が想定されていない部品ですので、基板側の細かな加工・調整を行いながら、慎重に作業を進めていきます。

プレッシャーセンサー 新旧比較

左が取り外した不良センサー、右が新品

外見はほぼ同じですが、この小さな部品が今回のシフトトラブルの原因だったわけです。

バルブボディとオイルパンの組み付け

センサーの交換が終わったら、バルブボディを車両側へ取り付けていきます。

9Gトロニック バルブボディ取り付け トルクレンチ

トルクレンチで、規定値どおりに一本ずつ締め付け

取り付けのボルトには、メーカー指定の締め付けトルクが定められています。ここを感覚で締めてしまうと、油圧漏れやセンサーの動作不良、再発の原因にもなりかねないところ。地味な作業ですが、一本一本トルクレンチで管理しながら締め付けていきます。

続いて、オイルパンを組み付けます。

9Gトロニック オイルパン 新旧比較

左が取り外したオイルパン、右が新品。ストレーナー一体型

9Gトロニックのオイルパンは、ATFフィルター(ストレーナー)が一体になっているのが特徴。フィルター単体での交換ができないため、整備時はオイルパンごと新品にするのが基本となります。

仕上げ・確認作業

ATFの補充と油量調整

PETRONAS Tutela MULTI ATF 700

今回使用したATF:PETRONAS Tutela MULTI ATF 700

9Gトロニック ATF充填

作業で抜けた分のATFを補充。今回は圧送交換ではなく補充のみ

続いて、XENTRYで油量調整に入ります。

XENTRY Intelligent Predictive Repair

XENTRYのIntelligent Predictive Repair画面。VGSのダイアグノシスを続行

9Gトロニック オイルレベル測定 Pos.1-4

XENTRYのオイル・レベル測定画面。Pos.1(OIL IN)→ Pos.2(DRAIN)→ Pos.3(JUSTIFY)→ Pos.4(OIL OUT)の手順

9Gトロニックの油量調整は、Pos.1から4まで段階的に進めていく流れ。診断機の指示どおりに進め、規定量に合わせて油量調整は完了です。

9Gトロニック 油量調整プロセス実行中

油量調整プロセスの実行中

再診断と試運転

最後に再診断と試運転です。

GLC250 修理後 診断結果

修理後の診断結果。VGS(9速トランスミッション・コントロール)のエラーは解消

P073E00、P07B700ともに解消。試運転では、エンジンを温めて症状が出ていた状態を再現してみます。

結果は良好。Dに入らずNに戻る症状は出なくなり、Dレンジへのシフトもスムーズです。3速で止まることもなく、各段への変速も問題なし。19万kmの個体でしたが、嘘のように普通の9Gトロニックに戻りました。

これで修理は完了となります。

よくあるご相談

Q. P07B700とは何のコードですか?

XENTRYでは「プレッシャー・センサのシグナルが妥当でありません」と表示されるコードです。9Gトロニック内部のプレッシャーセンサーの信号が、妥当ではないと判断されたことを示しています。今回のGLC250ではP073E00と一緒に記録されていて、プレッシャーセンサーの単体交換で症状が出なくなりました。ただし、当店のE400の事例のように、P07B700が出ていなくてもプレッシャーセンサーが原因だったケースもあります。

Q. U012600も出ていましたが、シフトの不具合と関係ありますか?

U012600は、ステアリング・コラム・モジュールとの通信に関するコードです。今回はシフトの症状とは別系統のコードのため、切り離して診断を進めました。プレッシャーセンサーの交換後、9速トランスミッション・コントロール(VGS)のエラーは解消し、シフトの症状も出なくなっています。

Q. 走行19万kmでも、直す価値はありますか?

今回のGLC250は19万kmの個体でしたが、原因がプレッシャーセンサー1つだったため、センサーの単体交換で普通に走れる状態に戻りました。直す価値があるかどうかは、原因の中身や、ほかに整備が重なりそうかによって変わります。判断の考え方は、9Gトロニックの不調の解説記事でまとめています。

今回の作業まとめ

● 車両:メルセデスベンツ GLC250(X253/DBA-253946)/初年度登録 平成28年3月/190,000km
● 症状:温まるとDに入らずNに戻る、Dで3速から変速しない(Rには入る)。他店でのATF・ストレーナー交換では改善せず
● DTC:P073E00 リバース・ギヤにシフトできません/P07B700 プレッシャー・センサのシグナルが妥当でありません(U012600は別系統として切り離し)
● 原因:9Gトロニック内部のプレッシャーセンサー(Y3/8b5)の不良
● 作業:プレッシャーセンサー単体交換/バルブボディ組み付け時のトルク管理/オイルパン(フィルター一体型)新品交換/ATF補充/XENTRYによる油量調整
● 確認:VGSのエラー解消、温まった状態での試運転で症状が出ないことを確認

ご依頼ありがとうございました。

丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。

急いで作業を行えばヒューマンエラーにもつながりますし、ミスを無くすためにも1〜2週間程度のお時間をいただいております。

どうぞご協力お願いいたします。

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経験豊富な整備士が適切なアドバイスをいたします、遠慮なさらずにお問い合わせください。

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