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DS7クロスバックのアドブルー警告|「排気システム故障:エンジン始動不可」の原因と対処【U010E/P20E8】

今回のお車は、DSオートモービルのDS7クロスバック。2.0LのBlueHDi(ディーゼル)に8速ATを組み合わせた、全長4.6m近い堂々としたSUVです。

ご依頼は、いつもお声がけいただいている業者さんから。DSやシトロエンを中心に、アドブルー(AdBlue)関連のご相談をいただくのは、数えてみると今回でおよそ7回目になります。

メーターに出ていたのは「排気システム故障:エンジン始動不可まであと1100km」の表示。診断機をつないでみると、記録されていたのは尿素水ポンプとの通信が途絶えていることを示すU010E。同じDSでも、以前の事例とはまた違うコードです。

DS7クロスバック 入庫 ボンネットを開けた状態

今回のお車、DS7クロスバック。ボンネットを開けて作業の準備。

入庫の経緯と「あと1100km」の表示

業者さんご自身での持ち込みで入庫しました。年式は2019年、走行距離は約4.4万km。ディーゼルとしてはまだまだこれからという距離です。

さっそくメーターを確認すると、左側の表示エリアに黄色いAdBlueマークとともに「排気システム故障:エンジン始動不可まであと1100km」のメッセージ。エンジンチェックランプも点灯しています。

DS7クロスバック AdBlue警告 エンジン始動不可まであと1100km

「排気システム故障:エンジン始動不可まであと1100km」の表示。AdBlueマークとエンジンチェックランプも点灯。

あわせて「エンジン故障:要修理」のメッセージも表示されていました。

DS7クロスバック エンジン故障 要修理 メーター表示

「エンジン故障:要修理」の表示。

1100kmと聞くと、まだ余裕があるように感じる方も多いのではないでしょうか。ただ、この数字はあくまで「予測」です。カウントがゼロになる前にエンジンの再始動ができなくなる事例もあるため、数字が大きいうちに手を打っておくのが安心なわけです。

診断結果:検出されたDTC

続いて診断機(Autel)で、エラーの中身を確認していきます。記録されていたのは次の2つでした。

DS7クロスバック 診断機 DTC U010E P20E8

診断機の画面。尿素水(AdBlue)系のコードが2つ記録されている。

● U010E:87:エミッションコントロールCANネットワーク(尿素水ポンプ-ゲージモジュール)− 情報が見当たりません
● P20E8:21:尿素水の圧力 − 指示より低い値

さて、ここで注目したいのは1つ目の U010E です。Uから始まるコードは通信系のエラーで、末尾の「87」はメッセージが届いていない状態を表します。要するに、エンジンECUから見て「尿素水ポンプ-ゲージモジュールからの情報が途絶えている」というわけです。

2つ目の P20E8 は、尿素水の圧力が指示した値まで上がっていないという内容。この2つは別々の故障というより、ひとつながりの症状として見るのが自然です。

原因:尿素水タンク側モジュールの不調

ざっくり言うと、「尿素水ポンプ-ゲージモジュール」は、尿素水を送り出すポンプと、残量を測るゲージなどをひとまとめにしたユニットです。DS7クロスバックを含むPSA系(プジョー・シトロエン・DS)のBlueHDiでは、このユニットが尿素水タンク側に組み込まれていて、自分の状態を通信でエンジンECUへ報告しています。

その報告が届かなくなると、ECUはポンプが動いているのかどうかを把握できません。圧力も目標に届かず、結果としてP20E8が記録され、走行距離の制限(カウントダウン)へとつながっていく。そんな流れが濃厚です。

通信が途絶える原因としては、モジュール本体の故障のほか、配線やコネクター、電源まわりなども候補に挙がります。ただ、PSA系のBlueHDiに関するご相談では、タンク側モジュールの不調に行き着くケースが少なくありません。ちなみに、以前ご紹介したDS4クロスバックでは、尿素水レベルの信号エラー(P21C5)が出ていました。同じDSでも、出てくるコードや表示は車種ごとに異なります。

部品交換で直す場合、ここが悩ましいところです。このモジュールはタンクと一体での交換になることが多く、部品代と工賃を合わせて30〜50万円ほどになることもあります。フランスからの取り寄せになるため納期も読みにくく、入荷を待つあいだは車を動かせない、ということも起こり得ます。

業者さんと相談した結果、今回は部品交換ではなく、ECUのプログラム調整で対応する方針に決まりました。方針が固まったので作業を進めてまいります。

解決策:ECUプログラムでの調整

DS7クロスバックのECUは、Delphi製の DCM7.1A。まずはECUを車両から取り外していきます。基板はとても繊細なので、静電気に注意しながらの作業です。

今回はECUをベンチに載せ、基板へ直接アクセスする BOOT接続 でデータを扱います。ツールはFLEX(MagicMotorsport)を使用しています。

DS7クロスバック ECU Delphi DCM7.1A BOOT接続 ベンチ作業

ECUをベンチに固定してBOOT接続。基板上の接点へプローブを当てていく。

FLEX DCM7.1A 接続成功 SUCCESS

FLEXとの接続に成功(SUCCESS)。ここから読み出しへ。

接続できたら、まずはオリジナルデータの読み出しとバックアップから。ここを丁寧にやっておくことで、いざというときに元の状態へ戻せるわけです。

FLEX DCM7.1A フルバックアップ 読み出し中

フルバックアップを実行中。内部フラッシュから順に読み出し。

FLEX ECUファイル保存 バックアップ

読み出したデータの保存。紛失や消失がないよう、複数箇所にバックアップ。

続いて、読み出したデータを元に、尿素水(SCR)システムに関わる判定を無効化したデータを作成していきます。

FLEX 書き込みデータの読み込み

作成したデータを読み込み、書き込みの準備。

FLEX DCM7.1A 内部フラッシュ 書き込み中

内部フラッシュへ書き込み中。電源や接続が途切れないよう見守る時間。

FLEX DCM7.1A 書き込み完了 SUCCESS

書き込み完了(SUCCESS)。エラーなく終了。

書き込みが終わったら、ECUを車両に戻して最終確認に入ります。

作業後の結果

診断機で改めて確認すると、記録されていたU010E・P20E8は消え、コードは検出されません。

DS7クロスバック 診断機 最終チェック エラーなし

診断機で最終チェック。「イベントコードが検出されていません」ですって。

そしてメーター。あの「あと1100km」の表示もエンジンチェックランプも、嘘のように消えています。

DS7クロスバック 作業後 メーター 警告消灯

作業後のメーター。警告表示が消え、走行距離44,238kmの通常表示に。

● 「エンジン始動不可まであと1100km」の表示と走行距離の制限が解除
● AdBlue警告・エンジンチェックランプが消灯
● 診断機でもDTCの検出なし
● 部品交換に比べて費用と日数を抑えての対応

最後に試運転を行い、警告が再点灯しないことを確認して完成です。これで作業は完了となります。

今回の作業まとめ

● ご依頼:業者さんからの持ち込み
● 車両:DSオートモービル DS7クロスバック BlueHDi(LDA-X74AH01)/2019年式/走行距離 44,238km
● 症状:「排気システム故障:エンジン始動不可まであと1100km」「エンジン故障:要修理」の表示
● DTC:U010E:87(尿素水ポンプ-ゲージモジュール − 情報が見当たりません)、P20E8:21(尿素水の圧力 − 指示より低い値)
● ECU:Delphi DCM7.1A
● 接続方式:BOOT接続(FLEX)
● 対応:AdBlue/SCRシステムのECUプログラム調整(無効化)

「修理」ではなく「調整・撤廃」という考え方

今回の作業は、壊れた部品を新品に戻す「修理」ではありません。ECUのプログラム側でAdBlue/SCRシステムの判定を調整・撤廃し、走行距離の制限やエンジン始動不可を回避するための処置です。

ですので、尿素水タンク側のモジュールそのものが直ったわけではありません。部品の手配がつき、本来の状態に戻したいとお考えの際は、保管しているオリジナルデータに戻したうえでの部品交換をおすすめしています。

なお、AdBlue/SCRシステムに手を加えることについては、公道走行や車検の扱いをめぐって不確かな部分があります。ご使用にあたっての最終的なご判断は、お客様ご自身でお願いしています。気になる点は作業前に遠慮なくご相談ください。

ご依頼ありがとうございました。

何度もお声がけいただけること、本当にありがたく感じています。これからも、業者さん同士で安心して任せ合える関係を大切にしていきたいと思います。

今回の作業は部品の調達に時間がかかったり、チェックランプ点灯の裏に隠された重大エラーの事などを踏まえた作業となりますので、ご理解いただければ幸いです。

DSやプジョー・シトロエンなどのPSA系、メルセデスベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、三菱ふそう(キャンター・ローザ)など、商用車を含めて対応可能な場合がありますので、NOxやアドブルーでお困りでしたらお問い合わせお待ちしております。

丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。

重要な補足説明

毎回お伝えしていますが、この作業は「修理」とは言えないと考えています。

NOx・AdBlueの部品は、どちらも高額なうえに欠品していることが多く、「直したくても直せない」状態でお困りの方を数多くお見受けします。そこで、プログラムを少し“調整”したり、部品が入荷するまで動かせないお車に限って、一部の機能だけを一時的に“撤廃”したりして、お車を使えるようにするのがこの作業です。

エンジンチェックランプが点いている原因がわかっていても、NOxやAdBlueの警告で点灯し続けている状態では、まったく別の重大なトラブルが起きても、ドライバーさんは気づくことができません。

そこで、過敏に反応する設定になっている“閾値(いきち)”に少しだけ幅を持たせ、チェックランプの点灯を一時的に抑えます。本当に重大なトラブルが起きたときに早く気づけるよう、チェックランプ本来の「お知らせ」の役割を取り戻すための作業です。

部品が欠品・納期未定で車が動かせない(スターターロックが作動してエンジンがかからない)ときなどに、部品が届くまでの一時的な緊急対策として行うものです。部品が入荷したら、元のプログラムに戻して部品を交換することをおすすめしています。ご依頼の際は、この点をご理解ください。

この技術は、まだ発展途上です

ほとんどのお車で成功していますが、ごくまれに、エラーが消えない、スターターロックが再び作動するといったことが起こる可能性は、ゼロではありません。

この作業ができるネットワークは、今では10社まで広がり、これからも広がっていく見込みです。お互いに情報を共有し、ときにはトライ&エラーを重ねながら、全員で前に進んでいます。

まだ完璧に仕上がった技術ではないため、その「ごくまれ」なケースに当たり、ご迷惑をおかけしてしまうこともあるかもしれません。そんなときこそネットワークを生かし、施工する仲間たちと知恵を出し合って、精一杯対応いたします。全員が本気で取り組んでいますので、温かく見守っていただければ幸いです。

もちろん、そうしたことが起こらないよう、日々学び、腕を磨き続けています。「依頼してみたい」と思っていただけたら、お気軽にお問い合わせください。

オートプラネット 篠塚

AdBlueの警告でお困りの方へ

「あと数百キロでエンジンがかからなくなる」という警告。その不安を抱えたまま運転するのは、とてもストレスがかかるものです。

ディーラーさんでの高額修理に悩んでいる方も、まずは一度ご相談ください。

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