「メーターに『残り350km』のカウントダウンが出て、AdBlue警告が消えない」
旅行中に突然現れるこの表示。自宅まで無事に帰れるのか、不安が募ります。残り350kmあるとはいえ、山道を走って帰るには心もとない距離です。すぐに岐阜県高山市で待ち合わせをして、引き取りに向かいました。

国道158線沿いのドライブインをお借りして、レンタカーと入れ替えをして積み込みます。松本市からの道中は切り立った崖を縫うように走る国道であるため、大きな揺れでもズレることのないよう4輪ともしっかりと固縛。山間もあってか、午後5時を過ぎると辺りは真っ暗です。
入庫車両とお客様の状況

お車はBMW X5シリーズ(E70)です。走行距離は18万キロを超えていますが、外観は非常に綺麗な状態を保っています。
「また同じことの繰り返しか…」
今までの経緯も含め、今回はAdBlueを一時的に撤廃(無効化キャンセル)して様子を見るという方向になりました。
診断結果:検出されたDTC

SCRアドブルーシステムにエラーを検出。
0046E8:SCR システム、効率
004748:SCR システム 警告およびシャットダウンシナリオ、警告ステージ1
00474C:SCR システム、警告およびスイッチオフになる状況、警告ステージ1
旅行先で突然動かなくなったら、レッカー代だけでも数万円。仕事で使っている車なら、業務にも大きな支障が出ます。

メーター内には残りの走行距離を制限するカウントダウンが表示されて、残りは248キロ。入庫時点でカウントは確実に減っていきます。このカウントがゼロになれば、エンジンは二度と始動しません。
部品交換か、ECU調整か
ただし、BMW X5のAdBlue関連部品は非常に高額です。NOxセンサーだけで十万円前後、AdBlueタンクは二十万円以上。キャタライザーまで交換となれば、総額で50万円を超えることも珍しくありません。
「もう部品交換はやりたくない」
そう判断されたお客様のご希望で、今回は根本的な対策としてAdBlueシステムの無効化・判定ロジック調整を実施することになりました。
ECU書き換え(AdBlue撤廃)の作業工程
Step 1:オリジナルデータのバックアップ


まずはECUのデータを読み出します。オリジナルのマスターデータは何重にもバックアップを取り、万が一のトラブルや将来的な売却時にも元の状態に復元できるようにしておきます。
Step 2:AdBlue/NOx対策プログラムの作成

保存したオリジナルデータをベースにAdBlue/NOx対策用プログラムを作成します。AdBlue関連の制御(NOxセンサーの監視、尿素噴射量、ヒーター動作など)の部分だけを慎重に調整し、エンジンそのものの燃焼設定には一切触れません。このため、黒煙が増えたり、走りが悪くなるといった変化は起こりません。
Step 3:ECUへの書き込み

編集したセクターのみ書き換えが実施されて、変更のないセクターはスキップされます。無事に書き込み完了です!
作業後の結果:警告灯とカウントダウンが消灯


表示されていたエラーとカウントダウンの表示は完全に消えました。
追加作業:ATF圧送交換


18万キロ走行したATFは、かなり劣化していました。このまま使い続けると、変速ショックや滑りの原因になります。古いオイルを排出中。

フィルターと一体式のオイルパンは新品に交換です。BMW X5のATFパンは、フィルターと一体式になっています。このパンを新品に交換することで、内部のゴミや汚れもリセットされます。

車種別の専用アタッチメントを使用してトルコン太郎と接続。



トルコン太郎を使った圧送交換で、古いオイルを徹底的に入れ替えます。通常のオイル交換では抜けきらない、トルクコンバーター内部のオイルまで完全に交換できるのが強みです。数回の圧送交換を繰り返します。

最後に規定量まで油量調整して、すべての作業が完了です。
旅先のトラブルも、諦めないでください
「旅行中に突然カウントダウンが始まった」
「ディーラーで何度も直したのに、また同じエラーが出た」
遠方の方でも、レッカーサービスを利用すれば負担なくお車をお預けいただけます。同じような症状でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
急いで作業を行えばヒューマンエラーにもつながりますし、ミスを無くすためにも1~2週間程度のお時間をいただいております。
● 初めての問い合わせで不安な方
● 車の修理をしたいけど迷っている方
● どこのお店に依頼していいかわからない方
重要な補足説明
毎回お伝えしていますが、この作業は「修理」とは言えないと考えています。
NOx・AdBlueの部品は、どちらも高額なうえに欠品していることが多く、「直したくても直せない」状態でお困りの方を数多くお見受けします。そこで、プログラムを少し“調整”したり、部品が入荷するまで動かせないお車に限って、一部の機能だけを一時的に“撤廃”したりして、お車を使えるようにするのがこの作業です。
エンジンチェックランプが点いている原因がわかっていても、NOxやAdBlueの警告で点灯し続けている状態では、まったく別の重大なトラブルが起きても、ドライバーさんは気づくことができません。
そこで、過敏に反応する設定になっている“閾値(いきち)”に少しだけ幅を持たせ、チェックランプの点灯を一時的に抑えます。本当に重大なトラブルが起きたときに早く気づけるよう、チェックランプ本来の「お知らせ」の役割を取り戻すための作業です。
部品が欠品・納期未定で車が動かせない(スターターロックが作動してエンジンがかからない)ときなどに、部品が届くまでの一時的な緊急対策として行うものです。部品が入荷したら、元のプログラムに戻して部品を交換することをおすすめしています。ご依頼の際は、この点をご理解ください。
この技術は、まだ発展途上です
ほとんどのお車で成功していますが、ごくまれに、エラーが消えない、スターターロックが再び作動するといったことが起こる可能性は、ゼロではありません。
この作業ができるネットワークは、今では10社まで広がり、これからも広がっていく見込みです。お互いに情報を共有し、ときにはトライ&エラーを重ねながら、全員で前に進んでいます。
まだ完璧に仕上がった技術ではないため、その「ごくまれ」なケースに当たり、ご迷惑をおかけしてしまうこともあるかもしれません。そんなときこそネットワークを生かし、施工する仲間たちと知恵を出し合って、精一杯対応いたします。全員が本気で取り組んでいますので、温かく見守っていただければ幸いです。
もちろん、そうしたことが起こらないよう、日々学び、腕を磨き続けています。「依頼してみたい」と思っていただけたら、お気軽にお問い合わせください。
オートプラネット 篠塚
参考データ・作業内容
BMW X5 xDrive35d パフォーマンスパッケージ (E70)
施工時走行距離: 180,000 キロ
・AdBlue調整/NOxセンサー鈍感化プログラムインストール
・ATF圧送交換(トルコン太郎使用)
故障で動かせないときは、引き取りに伺います
ご加入の自動車保険(任意保険)のロードサービスを使って、ご自宅や現地から当店までレッカーで搬送できます。遠方の方もご相談ください。
- ご利用は無料
- 等級に影響なし
- 保険料に影響なし
こんな症状のときに
修理後の納車や、修理期間中のレンタカーも、保険の付帯サービスで使える場合があります。
内容はご加入の保険によって異なります。お手元に保険証券をご用意のうえ、必ず事前にご相談ください。
修理費用によっては、お乗り換えも選択肢です。故障したままの状態でも買取できます。
故障車・不動車の買取査定はこちら
この記事を書いている人

オートプラネット篠塚真介
埼玉にあるオートプラネットで働くメカニック。
日々、大好きな整備や修理に明け暮れていて、とても充実しています。仕入先でみつけた素敵なクルマや整備・修理の内容を、自分のか細い語彙力で紹介していきます。
何ごとにも探求心のある人に憧れる。
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