
今回のお車はスバル レガシィツーリングワゴン 2.0GT スペックB(TA-BP5)。平成15年式の5AT車で、走行距離は約77,000kmです。
東京都板橋区のオーナー様が異変に気づいたのは、スポーツモードで走っていたときのこと。メーターのSPORT表示灯が点滅を始め(いわゆるSPORT点滅)、シフトレバーやシフトボタンを操作しても表示は変わりません。その状態でDレンジに切り替えても、メーターの表示がDになるだけで、変速は固定されたまま。異音は感じなかったそうです。
ここからの確認がとても丁寧でした。エンジンをかけ直すと、点滅は続くものの、Dレンジでは変速して問題なく走行でき、バックも問題なし。ところがスポーツモードに入れると、また同じ症状が出る。そこでもう一度エンジンをかけ直し、Dレンジのまま約400km走ってご帰宅されたとのこと。その間、Dレンジでの不具合は出なかったそうです。
走れてしまうからこそ、判断に迷う症状です。修理と合わせて12ヶ月法定点検もご依頼いただき、自動車保険のロードサービスを使って当店からお引き取りに伺いました。

診断と原因特定
まずはメーターの確認から。シフト位置はPですが、緑のSPORT表示が出ている状態です。

さて、診断機で全システムをスキャンしていきます。

変速機制御(TCM)には、次の3種類のコードが計5件記録されていました(現在と旧を別々に数えています)。日本語の説明は診断機の表示のまま載せています。
P1798 ギア1速及びエンジン・ブレーキ(現在・旧)
P1799 インターロック(旧)
スバル5ATで多いP1710(タービン回転センサー2)ではなく、シフトソレノイドのコードが出ていました。P1798は、1速のエンジンブレーキに関わるコードです。
『シフトソレノイド』とは、バルブボディに取り付けられた電磁弁のことです。バルブボディはATの中で油圧の通り道を切り替える部品で、ソレノイドはその切り替えを実行する役割を持っています。ここに異常が出ると、TCU(トランスミッションコントロールユニット)が狙いどおりに変速を制御できなくなるわけです。
ほかにもECMのP1574(キー通信障害)、IUMのB0221(CAN-HS ECM 無受信データ)、B0402(イモビライザーキー照合NG)、B0500(キーレス UART 通信異常)、CANのU1221(CAN-HS ECM 無受信データ)が記録されていました。ただ、ステータスはいずれも「旧」か「従来」。「現在」と表示されていたのは、TCMのP0771とP1798の2コードだけです。
注目したいのは、400kmを走って帰れたお車でも、この2コードが「現在」のまま残っていた点。Dレンジで症状が出なかった理由までは、今回の診断データだけでは断定できません。ですが、走れることと直っていることは別の話なわけです。
P0771が「現在」の故障として残っていること、そしてスポーツモードで変速が固定されるという症状。この2つから、バルブボディ側の不具合が濃厚です。
なぜバルブボディごとの交換なのか?
当店のブログではセンサーやソレノイド単体の交換事例を多くご紹介していますが、このお車のバルブボディは事情が違います。いつもタービン回転センサーを交換しているタイプとは別の、珍しいタイプ。同じレガシィBP5でも、以前ご紹介したP1710の事例とはバルブボディのタイプが異なります。しかも、このタイプはシフトソレノイドもタービン回転センサーも、部品単体での供給がありません。単体で交換して直す、という選択肢がないわけです。
そこで今回は、新品のATコントロールバルブボディに交換する形で作業を進めてまいります。
自分のお車がどのタイプかを見分けるには?
ご自分のお車がどちらのタイプなのか、気になる方も多いのではないでしょうか。これは車の外見からはわかりません。見分けるには、車両のコーションプレートの確認が必要です。ご相談の際は、コーションプレートの情報もお知らせいただくとスムーズです。
一度は入手できなくなったバルブボディ
このタイプには、部品の供給が途絶えていた時期があります。同じタイプのバルブボディを交換したレガシィB4 3.0R(BLE)の事例を書いた当時は、まだバルブボディの供給があった。ところがその後メーカー在庫がなくなり、事実上、新品は入手できない状態に。メーカーに確認しても、生産再開の目途はないとのことでした。
それからしばらくは修理ができず、中古品で対応してきました。ただ、中古品もいずれ故障することがあり、ご依頼をいただいても修理しづらい状況が続いていました。
状況が変わったのは、2026年11月時点で半年ほど前のこと。メーカーが生産を再開して供給が戻り、いまはメーカーに在庫が十分にあるので修理が可能です。以前、部品の問題で修理をあきらめた方も、一度ご相談ください。
作業内容
まずはATFを抜くところから。車両の下側からの作業です。


続いてオイルパンを取り外していく。配線の付いたバルブボディが顔を出しました。

こちらが取り外したバルブボディと、新品のバルブボディ。再生品や中古品ではなく、メーカーが生産を再開した完全な新品です。ストレーナーも新品のバルブボディに付属しているので、一緒に新しくなります。


ご覧のように、外から眺めただけでは内部の良し悪しまで判断できません。だからこそ、判断の手がかりになるのが診断機のデータです。
さて、新しいバルブボディを組み付ける前に、ケース内部をきれいにしていきます。


続いて、外しておいたオイルパンの清掃です。ATFの色には赤みが残っていましたが、マグネットを見ると様子が違いました。


走行距離は77,000kmほどでも、平成15年式のお車です。ATFの色だけでは、内部の状態まではわからないものですしね。


オイルパンを取り付けたら、新しいATFを入れていきます。バルブボディごと交換したので、ATFも大部分が入れ替わる形です。
仕上げ・確認作業
組み付けが終わったら、診断機の特別機能からメモリクリアを実行していきます。これまでの学習内容をリセットして、新しいバルブボディで仕切り直すための作業。


ATFの量はレベルゲージで確認。

そして試運転へ。スポーツモードに入れても、点滅も変速の固定も出ません。動作に問題なし。
作業後のメーターがこちら。シフト位置がPのまま出ていたSPORT表示が、嘘のように消えました。

入庫時の77,081kmから13km走った77,094kmの時点で、もう一度全システムをスキャン。

結果は――作業後のスキャンでは、P0771もP1798も出ていません。これで修理は完了となります。
参考データ・作業内容
- 車種:スバル レガシィツーリングワゴン 2.0GT スペックB(TA-BP5)
- 年式:平成15年5月
- トランスミッション:5AT
- 走行距離:77,081km(入庫時のメーター)
- 症状:SPORT点滅(スポーツモードでSPORT表示灯が点滅)と変速の固定
- 主なDTC:P0771 シフトソレノイドE 異常、P1798 ギア1速及びエンジン・ブレーキ、P1799 インターロック
- バルブボディ:シフトソレノイド・タービン回転センサーの単体供給がないタイプ(2026年11月時点でメーカー在庫あり)
- 作業内容:ATF排出、オイルパン脱着・清掃、コントロールバルブボディ交換(新品・ストレーナー付属)、ケース内部洗浄、ATF補充、メモリクリア、ATF量確認、スポーツモードでの試運転、再スキャン
よくあるご質問
Q. SPORT点滅が出ていても、Dレンジで走れれば大丈夫ですか?
大丈夫とは言い切れません。今回のお車はDレンジで約400km走行できましたが、診断ではP0771とP1798が「現在」の故障として残っていました。走れる場合でも、早めの診断がおすすめです。
Q. P0771はどんな故障コードですか?
Autel診断機では「シフトソレノイドE 異常」と表示されるコードです。シフトソレノイドは、ATの変速に関わる油圧の切り替えを実行する電磁弁で、バルブボディに取り付けられている部品です。
Q. スバル5ATの不調は、バルブボディ交換が必要ですか?
お車の状態とバルブボディのタイプによって変わります。今回はシフトソレノイドもタービン回転センサーも単体供給がないタイプで、新品のバルブボディに交換しましたが、スバル5ATの変速ショックではP1710が記録され、センサー交換で改善するケースも多いです。故障コードと症状を確認したうえで、一台ずつ判断しています。
Q. 自分の車のバルブボディがどのタイプか、どうすればわかりますか?
車の外見からはわかりません。見分けるには、車両のコーションプレートの確認が必要です。
Q. 入手できなくなっていたバルブボディは、いまは手に入りますか?
2026年11月時点では入手できます。メーカー在庫がなくなり、新品が事実上入手できない時期がありましたが、半年ほど前からメーカーが生産を再開しました。現在はメーカーに在庫が十分にあり、修理が可能です。
ご依頼ありがとうございました。
丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。
急いで作業を行えばヒューマンエラーにもつながりますし、ミスを無くすためにも3日から1週間程度のお時間をいただいております。
どうぞご協力お願いいたします。
● 初めての問い合わせで不安な方
● 車の修理をしたいけど迷っている方
● どこのお店に依頼していいかわからない方
経験豊富な整備士が適切なアドバイスをいたします、遠慮なさらずにお問い合わせください。
同じ症状でお困りの方へ
「変速ショック」「回転数が高い」「警告灯点滅」などの症状は、ミッション本体の故障と思われがちですが、実際にはセンサーやバルブボディが原因のケースがほとんどです。
車種・型式/症状の出る条件(いつ・どんな場面)/警告灯や表示内容/DTC(分かれば)をお知らせいただくとご案内がスムーズです。
▼ スバルAT/CVTの修理方針・Q&Aはこちら
👉 スバル AT/CVT 整備・修理ラボ(株式会社Auto Planet)
お問い合わせ・ご相談
P0771など5ATのSPORT表示点滅・変速の不調でお困りではないですか?
SPORT表示の点滅や変速の固定といった5ATのトラブルは、ミッション本体ではなく、内部のソレノイドやバルブボディが原因のことがあります。当社では、高額なミッション載せ替えの前に、診断データをもとにバルブボディやセンサーの整備で直せるかを確認しています。
お電話でのご相談:0480-47-0739
(受付時間 火~土 9:00~17:00)
故障で動かせないときは、引き取りに伺います
ご加入の自動車保険(任意保険)のロードサービスを使って、ご自宅や現地から当店までレッカーで搬送できます。遠方の方もご相談ください。
- ご利用は無料
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修理後の納車や、修理期間中のレンタカーも、保険の付帯サービスで使える場合があります。
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