「EGRもSCRもアドブルー噴射系統も、思い当たる箇所はひと通り修理・点検した。それでも時間が経つとまたエラーが入る」——大阪府のトラック専門整備工場様から、そんなお問い合わせをいただきました。
対象は三菱ふそうキャンター(エンジン:4P10)。しかも同じ症状を抱えた車両が3台あり、いずれもチェックランプ点灯からエンジン始動不能に至る状況を繰り返しているとのこと。
各部の修理を重ねても改善しないとなると、残された選択肢はECU側のプログラム対応です。今回は大阪からECUを郵送いただき、当店にてBOOT接続による書き換えで対応しました。
車両情報と症状
| 車種 | 三菱ふそう キャンター |
| エンジン | 4P10 |
| 年式 | 平成26年4月 |
| 型式 | TKG-FEA50 |
| 走行距離 | 448,717km |
| ミッション | 3ペダルMT(マニュアル) |
走行距離は44万kmを超えています。商用車としては珍しくない距離ですが、やはりここまで走ると排気系統の各部に疲労が蓄積してきます。
整備工場様からの相談内容を整理すると、以下のような経緯です。
- チェックランプ点灯 → エンジン始動不能を繰り返している
- EGR系統の修理・点検済み
- SCR系統の修理・点検済み
- アドブルー噴射系統の修理・点検済み
- それでも一定期間が経過するとエラーが再入力される
- 同じ症状のキャンターが3台ある
ここまで手を尽くしても再発するとなると、整備工場様としても「あとは何をすればいいのか」という状況です。同じ症状が3台に共通して出ているという事は、個体の問題というよりもこの年式・型式に共通する構造的な傾向と見るのが自然でしょう。
検出されたDTCコード
整備工場様から共有いただいた故障コードは以下の通りです。
DTC 3361-18:NOxセンサー 排出ガス高すぎる
NOxセンサーが検知する排出ガスの値が基準を超えているというコードです。SCR(選択触媒還元)システムがNOxの浄化を十分に行えていない、あるいはセンサー自体の劣化によって正確な計測ができていない状態を示しています。
DTC 520558-31:システムインフォメーション6
こちらはシステム全体の異常を示す包括的なコードで、上記のNOxセンサー異常と連動して記録されているケースが多いです。
部品交換で一時的に数値が正常に戻っても、センサーの閾値設定がシビアなために再びエラーとして検出されてしまう。いわゆる「いたちごっこ」の状態に陥っているわけです。
NOxセンサーは1つあたり10万円前後と高額で、キャンターの場合は複数個使用されているため、交換となると20〜30万円以上の出費になることも珍しくありません。しかも部品の供給が不安定で、納期が読めないケースも多々あります。商用車は「動かせない=売上が止まる」ですから、部品待ちの期間も大きな損失です。
整備工場様と協議した結果、今回はECUプログラム調整での対応を進めることになりました。
ECU郵送での対応
通常であれば車両を当店へお持ち込みいただくか、引き取りに伺う形になりますが、今回は大阪からの依頼。車両を動かすのは現実的ではありません。
そこでECUを取り外して郵送していただく方法をとりました。ECU単体が手元に届けば、当店の設備でデータの読み出し・書き換え・書き戻しが可能です。完了後に返送し、整備工場様側で車両に取り付けていただく流れです。
遠方の整備工場様にとっては車両を長距離輸送する必要がなく、コストも抑えられるメリットがあります。
BOOT接続によるECUデータ読み出し
今回のキャンター(4P10)に搭載されているECUはBosch EDC17CP52。このECUの場合、通常のコネクター経由(車両側からの通常接続)ではなく、ECUのケースを開封して基板に直接アクセスするBOOT接続での作業となります。

BOOT接続はECU内部の基板上にある特定のポイントに専用のプローブを当てて通信を確立する方法です。通常の接続に比べるとやや難易度は高めで、手元が少しでもずれればチップを破損させてしまう可能性があります。



データの読み出しとバックアップ
接続が確立したら、まずはオリジナルのECUデータをフルバックアップします。

画面には「STATUS: SUCCESS」の表示。無事にECUとの通信が確立されました。ここから全データの読み出しに入ります。


万が一のトラブルに備えて、オリジナルデータは複数の場所に保存します。この「元に戻せる状態を確保する」という工程は、作業の中でも特に重要なステップです。
プログラムの調整と書き込み
読み出したオリジナルデータを元に、NOxセンサーおよびSCR関連の閾値を調整したプログラムを作成します。

調整が完了したら、いよいよECUへの書き込みです。

書き込み中は電源の遮断や通信の途切れが致命的になりかねないため、周囲の環境にも気を配りながら完了を待ちます。

書き込みが正常に完了した事を確認し、ECUケースを元通りに組み付けて整備工場様へ返送します。あとは車両に取り付けていただき、診断機でのチェックと試運転で最終確認という流れです。
作業結果
整備工場様にて車両へ取り付け後、チェックランプは消灯し、エンジンも正常に始動する事を確認していただきました。
修理後の結果
- DTC 3361-18(NOxセンサー排出ガス高すぎる)のエラーが解消
- DTC 520558-31(システムインフォメーション6)のエラーが解消
- チェックランプ消灯
- エンジン始動不能の状態から復帰
- プログラム調整による対応のため、部品交換に比べて大幅にコストダウン
今回は3台中の1台目として作業を実施しました。残りの2台についても順次同様の対応を進めていく予定です。
ECU郵送対応について
今回のように遠方で車両を動かせない場合や、整備工場様側でECUの脱着が可能な場合は、ECU郵送でのプログラム書き換えに対応しています。
大阪・関西エリアに限らず、全国どこからでもECUをお送りいただければ施工可能です。整備工場様からの業者間依頼にも対応しておりますので、同様のトラブルでお困りの場合はお気軽にお問い合わせください。
参考データ・作業内容
- 車種:三菱ふそう キャンター(TKG-FEA50)
- エンジン:4P10
- 年式:平成26年4月
- 走行距離:448,717km
- ミッション:3ペダルMT
- ECU:Bosch EDC17CP52
- 接続方式:BOOT接続(ECUケース開封・基板直接アクセス)
- DTC:3361-18(NOxセンサー排出ガス高すぎる)、520558-31(システムインフォメーション6)
- 対応内容:ECU郵送書き換え(大阪府の整備工場様より)
ご依頼ありがとうございました。
今回の作業は部品の調達に時間がかかったり、チェックランプ点灯の裏に隠された重大エラーの事などを踏まえた作業となりますので、ご理解いただければ幸いです。
メルセデスベンツ以外でもBMWやフォルクスワーゲンなども対応可能な場合がありますので、NOxやアドブルーでお困りでしたらお問い合わせお待ちしております。
丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。
重要な補足説明
毎回お伝えしていますが、この作業は「修理」とは言えないと考えています。
NOx・AdBlueの部品は、どちらも高額なうえに欠品していることが多く、「直したくても直せない」状態でお困りの方を数多くお見受けします。そこで、プログラムを少し“調整”したり、部品が入荷するまで動かせないお車に限って、一部の機能だけを一時的に“撤廃”したりして、お車を使えるようにするのがこの作業です。
エンジンチェックランプが点いている原因がわかっていても、NOxやAdBlueの警告で点灯し続けている状態では、まったく別の重大なトラブルが起きても、ドライバーさんは気づくことができません。
そこで、過敏に反応する設定になっている“閾値(いきち)”に少しだけ幅を持たせ、チェックランプの点灯を一時的に抑えます。本当に重大なトラブルが起きたときに早く気づけるよう、チェックランプ本来の「お知らせ」の役割を取り戻すための作業です。
部品が欠品・納期未定で車が動かせない(スターターロックが作動してエンジンがかからない)ときなどに、部品が届くまでの一時的な緊急対策として行うものです。部品が入荷したら、元のプログラムに戻して部品を交換することをおすすめしています。ご依頼の際は、この点をご理解ください。
この技術は、まだ発展途上です
ほとんどのお車で成功していますが、ごくまれに、エラーが消えない、スターターロックが再び作動するといったことが起こる可能性は、ゼロではありません。
この作業ができるネットワークは、今では10社まで広がり、これからも広がっていく見込みです。お互いに情報を共有し、ときにはトライ&エラーを重ねながら、全員で前に進んでいます。
まだ完璧に仕上がった技術ではないため、その「ごくまれ」なケースに当たり、ご迷惑をおかけしてしまうこともあるかもしれません。そんなときこそネットワークを生かし、施工する仲間たちと知恵を出し合って、精一杯対応いたします。全員が本気で取り組んでいますので、温かく見守っていただければ幸いです。
もちろん、そうしたことが起こらないよう、日々学び、腕を磨き続けています。「依頼してみたい」と思っていただけたら、お気軽にお問い合わせください。
オートプラネット 篠塚
AdBlueの警告でお困りの方へ
「あと数百キロでエンジンがかからなくなる」という警告。その不安を抱えたまま運転するのは、とてもストレスがかかるものです。
ディーラーさんでの高額修理に悩んでいる方も、まずは一度ご相談ください。
遠方の方でも、コンピューター(ECU)をお送りいただければ施工可能です。本来の落ち着いた状態で安心して乗れるよう、状況に合わせてアドバイスいたします。
「修理」ではなく「調整」について
当店で行っているのは、壊れた部品を新品に交換するいわゆる「修理」とは少し異なります。
NOxセンサーやAdBlue関連部品は非常に高額である上に、欠品していることが多く、直したくても直せないという状況に陥っている方を非常に多くお見受けしています。
それをプログラムで少し”調整”してあげたり、部品が入荷するまで運用できないお車を一部機能についてのみ一時的に”撤廃”作業を施して運用できるようにするというものです。
いま点灯しているエンジンチェックランプの点灯原因・内容がわかってはいるものの、NOxやAdBlueがチェックランプを点灯させ続けている状態では、全く別の重大なトラブルが発生したとしてもドライバーさんは気付くことができません。
なので、過敏に反応する設定となっている”閾値”(いきち)を少しだけ幅を持たせた値に調整することでエンジンチェックランプの点灯を一時的に抑えることで、それとは全く別で発症した”本当に重大なトラブル”にドライバーさんが早く気付くことができるように、本来の意味としての「エンジンチェックランプ」点灯お知らせ機能を取り戻す作業です。
部品が欠品中で納期未定のため車が動かせない(スターターロックが発動してエンジンがかからない)などの場合での、部品が入るまでの一時的な緊急対策措置であることをご理解いただき、部品が入荷した際には元のプログラムに戻して部品を交換するという事を弊社ではお勧めしております。
同作業をご希望される方は、その辺りをご理解ください。
この技術・情報はまだまだ発展途上の所もあります。
殆どが成功し続けていく中、それでもごくごく稀にエラーが消えないとか、スターターロックが再発動するとか、そんな事が起こるのがゼロではありません。
この一連の作業内容ができるネットワークは今や10社まで広がり、まだ更に広がる可能性を含んでいます。そしてお互いに情報を共有しつつ、時にはトライ&エラーを続けながら全員で前に進んでいます。
現況では完璧に仕上がった技術ではない事や、もしかするとその「ごく稀」な案件に当たってしまう事もあるかも知れません。不本意ながらご迷惑をおかけしてしまう事だってあると思います。
そんな時こそそのネットワークを駆使し、施工している仲間たちで知恵を絞り出し合って、精一杯対応させていただきます。全員が本気で取り組んでいますので、暖かい気持ちで見守っていただければ幸いです。
もちろん、その様な事が起こらないように、日々学び、日々ステップアップし続けていますので、もし「依頼してみたい」と思っていただけた方は、お問い合わせください。
故障で動かせないときは、引き取りに伺います
ご加入の自動車保険(任意保険)のロードサービスを使って、ご自宅や現地から当店までレッカーで搬送できます。遠方の方もご相談ください。
- ご利用は無料
- 等級に影響なし
- 保険料に影響なし
こんな症状のときに
修理後の納車や、修理期間中のレンタカーも、保険の付帯サービスで使える場合があります。
内容はご加入の保険によって異なります。お手元に保険証券をご用意のうえ、必ず事前にご相談ください。
修理費用によっては、お乗り換えも選択肢です。故障したままの状態でも買取できます。
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コメント Comments
コメント一覧
オートショップ キャロット がコメント
2026年7月21日 1:15 AM
初めまして、オートショップ キャロットの小野寺 ヒロタカともうします。当社の積載車のブルーテックH26年キャンターで困ってます。ブースト異常でいつもENG SYSランプがつきます。キャンセル等できませんか?
オートプラネット篠塚 がコメント
2026年7月23日 12:08 AM
お問い合わせありがとうございます。恐れ入りますが下記のフォームより、エラー内容がわかる写真や診断結果を添付して送信していただけますでしょうか?
https://www.auto-planet.biz/blog/contact/
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