BMW X3(G01)のAdBlue警告について、新潟県の整備工場様よりご相談をいただきました。走行距離はまだ48,000km。年式も令和元年式と、決して古いお車ではありません。
それでも「AdBlueの低品質を検知」というエラーが立ち上がり、シャットダウンシナリオまで進行していました。ディーゼル微粒子センサーとラムダセンサーは交換済み。それでも消えない、とのこと。
お話をうかがっていくと、この症状を招いた事情がはっきり見えてきました。今回はECUを郵送していただき、プログラム調整で対応した事例です。
入庫の経緯と症状
ご相談は新潟県糸魚川市の整備工場様から。まずはお電話をいただき、その後に車両の詳細と診断結果をお送りいただく流れとなりました。
● 車種:BMW X3
● 型式:LDA-TX20(G01)
● 年式:令和元年6月
● 走行距離:48,000km
ご依頼の内容は「アドブルーの修理が高額なため、他の方法を探してほしい」というもの。BMWのSCR関連はタンクやインジェクター、NOxセンサーが絡むと部品代だけで相当な金額になりますし、欠品で納期が読めないケースも少なくありません。
ここで気になったのが、お車の使われ方でした。
通勤で毎日使っているものの、その距離が片道3kmほど。長距離を走るのは数か月に一度あるかないか、とのこと。
診断結果:検出されたDTC
こちらがご依頼元の整備工場様で読み取っていただいた診断結果です。

● 2C4E00 SCRシステム:AdBlueの低品質を検知、またはシステムエラー
● 29FC00 SCRシステム 警告およびシャットダウンシナリオ:警告レベル2
● 29FB00 SCRシステム 警告およびシャットダウンシナリオ:警告ステージ1
あわせて、ご依頼時には O2センサーヒーター制御回路(P0036)と SCR NOx触媒の浄化効率が閾値を下回っている状態(P20EE)についてもご申告をいただいています。
注目していただきたいのは、29FB00 と 29FC00 が同時に記録されている点です。
BMWのシャットダウンシナリオは段階制になっていて、放置するほど制限が強まっていく仕組みです。最初は警告表示だけですが、進行するにつれて走行距離のカウントダウンが始まり、最終的にはエンジンが再始動できなくなります。
今回はその警告が複数の段階で記録されていました。まだカウントダウンの表示には至っていないものの、進行している最中であることに変わりはありません。これは比較的重症なケースです。早めにご相談いただけたのは良い判断だったと思います。
原因:短距離走行とSCRシステムの相性
「まだ4.8万kmしか走っていないのに、どうして壊れるのか」
そう感じる方も多いのではないでしょうか。実はディーゼルの排ガス後処理システムに関しては、走行距離が少ないことが有利に働くとは限りません。むしろ今回のような乗り方のほうが、負担が大きいケースが多いです。
ざっくり言うと、SCRシステムは「排気が十分に熱くならないと仕事ができない」装置です。
AdBlue(尿素水)を排気中に噴射して、触媒の力でNOxを窒素と水に分解する。この化学反応には温度が必要で、触媒がしっかり温まってはじめて本来の浄化性能が出ます。
片道3kmという距離を考えてみてください。エンジンが冷えた状態からスタートして、触媒が温まりきる前に到着してしまいます。そしてまた冷える。これを毎日繰り返しているわけです。
結果として、こういうことが起こります。
● 浄化効率が規定値に届かず、NOx関連の判定が成立しない
● AdBlueがほとんど消費されず、タンク内に長期間とどまる
「AdBlueの低品質を検知」は液が悪いとは限りません
2C4E00 のメッセージを見ると、入れた液に問題があるように読めます。実はここが誤解を招きやすいところです。
この判定は、液の成分を直接分析して下しているわけではありません。SCR触媒の前後に付いているNOxセンサーの値を比べて、「これだけAdBlueを噴いたのに、NOxがこれしか減っていない」という結果から逆算しているものです。
ということは、どういうことでしょうか。NOxセンサー自体が正しく測れていなければ、液が正常でも「低品質」という結論になり得るわけです。実際、BMWのこのコードはNOxセンサーの不良が原因となっているケースが多いと言われています。
もうひとつ、AdBlue自体が劣化していた可能性も残ります。尿素水は時間とともに加水分解が進んでいく液体で、保管状態によっては1年から1年半ほどで規格の濃度を外れることがあります。片道3kmの使い方ではほとんど消費されませんから、補充の機会も当然少なくなるわけです。
今回は濃度の実測まで行っていないため、どちらが主因だったかは断定できません。ただ、いずれにしても短距離走行という使い方が背景にあることは間違いないという判断をしています。
センサーを交換しても消えなかった理由
今回のお車は、直近でディーゼル微粒子センサーとラムダセンサーを交換済みでした。それでもエラーは消えていません。
ここは大事なところなので、少し丁寧にご説明します。
ディーゼル車の排ガス後処理は、ひとつの装置ではなく複数のブロックに分かれています。そして、それぞれに別のセンサーが付いています。
● ディーゼル微粒子センサー … DPF(すすを捕集するフィルター)が正しく機能しているかを見る部品
● ラムダセンサー … 燃焼時の空気と燃料の比率を見る部品
● NOxセンサー … SCR触媒の前後に付き、NOxがどれだけ減ったかを測る部品
今回立ち上がっていたのは、SCRシステムに関するエラーです。そしてSCRの浄化率判定に直接関わっているのは、3つ目のNOxセンサーになります。
つまり、交換された2つのセンサーはどちらもSCRの判定そのものには関わらない部品だったわけです。ここが噛み合っていなかったため、良い部品に替えてもエラーは消えなかった、という流れになります。
「AdBlueの警告が出たからセンサーを交換する」という進め方は決して間違いではありません。ただ、排ガス関連のセンサーは種類が多く、名前も似ています。どのセンサーがどのエラーに紐づいているのかを先に切り分けておかないと、費用だけがかさんでしまうケースが出てきます。
ちなみに今回の場合、次の一手はNOxセンサーの交換ということになります。ただBMWのNOxセンサーは上流と下流で2本使われていて、どちらが不良かの特定も含めると、それなりの金額になってきます。オーナー様が「他の方法を探してほしい」とおっしゃったのは、そうした事情があってのことでした。
解決策:ECU郵送でのプログラム調整
今回は車両が新潟県にあるため、ECU本体のみをお送りいただいての作業となりました。遠方の場合によくお選びいただく方法です。

搭載されているのは Bosch MD1CS001。BENCH接続でアクセスしていきます。



ここからが調整作業です。




作業を終えたECUをご返送し、ご依頼元の整備工場様にて車両へ取り付けていただきました。
作業後の結果
施工後、ご依頼元様より「特に問題ありません」とのご報告をいただいています。
● SCRシステム関連のエラーが解消
● シャットダウンシナリオの進行が止まり、カウントダウンに至らずに済んだ
● AdBlueの補充管理から解放された
● 高額な部品交換を回避
もちろん、NOxセンサーを交換して本来の姿に戻すという道もあります。部品が手に入り、ご予算の折り合いがつくのであれば、そちらのほうが本筋ではあります。
ただ、片道3kmという乗り方そのものを変えるのは難しいですしね。この使い方を続ける限り、SCRが本来の温度域で働ける時間はどうしても短いままです。部品を新品に戻しても、また同じところに戻ってきてしまう可能性は残るわけです。
そのあたりをオーナー様とご依頼元様でご検討いただいた上での、今回のご判断でした。
遠方の方へ・ECU郵送という選択肢
今回のように車両を持ち込めない距離でも、ECU単体をお送りいただければ対応できる場合があります。
整備工場様からのご依頼であれば、脱着はそちらで行っていただけますので話が早いです。オーナー様ご自身の場合も、お近くの整備工場様にご相談いただければ進められるケースがあります。
ちなみにBMWの場合、ECUを外して戻す際の手順にはいくつか注意点があります。正しい流れを踏まないままエンジン始動を繰り返すと、別のユニットを傷めてしまうこともありますので、そのあたりは事前にお伝えするようにしています。
今回の作業まとめ
● 車種:BMW X3(G01/LDA-TX20)
● 年式:令和元年6月
● 施工時走行距離:48,000km
● ECU:Bosch MD1CS001(BENCH接続)
● 検出DTC:2C4E00/29FC00/29FB00(ほかP0036・P20EEのご申告あり)
● 作業内容:アドブルー調整/NOxセンサー鈍感化プログラムインストール
● 対応方法:ECU郵送(新潟県よりお送りいただき返送)
重要な補足説明
毎回重ねてお伝えしておりますが、これを「修理」とは言えないと思っています。
NOxにしてもAdBlueにしても、部品はどちらもかなり高額である上に欠品している事が非常に多く、直したくても直せないという状態に陥っている方を非常に多くお見受けしています。
それをプログラムで少し”調整”してあげたり、部品が入荷するまで運用出来ないお車を一部機能に付いてのみ一時的に”撤廃”作業を施して運用出来る様にするというものです。
いま点灯しているエンジンチェックランプの点灯原因・内容が分かってはいるものの、NOxやAdBlueがチェックランプを点灯させ続けている状態では、全く別の重大なトラブルが発生したとしてもドライバーさんは気付く事が出来ません。
なので、過敏に反応する設定となっている”閾値”(いきち)を少しだけ幅を持たせた値に調整する事でエンジンチェックランプの点灯を一時的に抑えることで、それとは全く別で発症した”本当に重大なトラブル”にドライバーさんが早く気付く事が出来るように、本来の意味としての「エンジンチェックランプ」点灯お知らせ機能を取り戻す作業です。
部品が欠品中で納期未定の為車が動かせない(スターターロックが発動してエンジンがかからない)などの場合での、部品が入るまでの一時的な緊急対策措置である事をご理解いただき、部品が入荷した際には元のプログラムに戻して部品を交換するという事を弊社ではお勧めしております。
同作業をご希望される方は、その辺りをご理解下さい。
この技術・情報はまだまだ発展途上の所もあります。
殆どが成功し続けて行く中、それでもごくごく稀にエラーが消えないとか、スターターロックが再発動するとか、そんな事が起こるのがゼロではありません。
この一連の作業内容ができるネットワークは今や10社まで広がり、まだ更に広がる可能性を含んでいます。そしてお互いに情報を共有しつつ、時にはトライ&エラーを続けながら全員で前に進んでいます。
現況では完璧に仕上がった技術では無い事や、もしかするとその「ごく稀」な案件に当たってしまう事もあるかも知れません。不本意ながらご迷惑をおかけしてしまう事だってあると思います。
そんな時こそそのネットワークを駆使し、施工している仲間たちで知恵を絞り出し合って、精一杯対応させて頂きます。全員が本気で取り組んでいますので、暖かい気持ちで見守っていただければ幸いです。
もちろん、その様な事が起こらない様に、日々学び、日々ステップアップし続けていますので、もし「依頼してみたい」と思って頂けた方は、お問い合わせ下さい。
ご依頼ありがとうございました。
今回の作業は部品の調達に時間がかかったり、チェックランプ点灯の裏に隠された重大エラーの事などを踏まえた作業となりますので、ご理解いただければ幸いです。
BMW以外でもメルセデスベンツ、フォルクスワーゲン、プジョー・シトロエン、三菱ふそう(キャンター・ローザ)など商用車を含めて対応可能な場合がありますので、NOxやアドブルーでお困りでしたらお問い合わせお待ちしております。
丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。
重要な補足説明
毎回お伝えしていますが、この作業は「修理」とは言えないと考えています。
NOx・AdBlueの部品は、どちらも高額なうえに欠品していることが多く、「直したくても直せない」状態でお困りの方を数多くお見受けします。そこで、プログラムを少し“調整”したり、部品が入荷するまで動かせないお車に限って、一部の機能だけを一時的に“撤廃”したりして、お車を使えるようにするのがこの作業です。
エンジンチェックランプが点いている原因がわかっていても、NOxやAdBlueの警告で点灯し続けている状態では、まったく別の重大なトラブルが起きても、ドライバーさんは気づくことができません。
そこで、過敏に反応する設定になっている“閾値(いきち)”に少しだけ幅を持たせ、チェックランプの点灯を一時的に抑えます。本当に重大なトラブルが起きたときに早く気づけるよう、チェックランプ本来の「お知らせ」の役割を取り戻すための作業です。
部品が欠品・納期未定で車が動かせない(スターターロックが作動してエンジンがかからない)ときなどに、部品が届くまでの一時的な緊急対策として行うものです。部品が入荷したら、元のプログラムに戻して部品を交換することをおすすめしています。ご依頼の際は、この点をご理解ください。
この技術は、まだ発展途上です
ほとんどのお車で成功していますが、ごくまれに、エラーが消えない、スターターロックが再び作動するといったことが起こる可能性は、ゼロではありません。
この作業ができるネットワークは、今では10社まで広がり、これからも広がっていく見込みです。お互いに情報を共有し、ときにはトライ&エラーを重ねながら、全員で前に進んでいます。
まだ完璧に仕上がった技術ではないため、その「ごくまれ」なケースに当たり、ご迷惑をおかけしてしまうこともあるかもしれません。そんなときこそネットワークを生かし、施工する仲間たちと知恵を出し合って、精一杯対応いたします。全員が本気で取り組んでいますので、温かく見守っていただければ幸いです。
もちろん、そうしたことが起こらないよう、日々学び、腕を磨き続けています。「依頼してみたい」と思っていただけたら、お気軽にお問い合わせください。
オートプラネット 篠塚
AdBlueの警告でお困りの方へ
「あと数百キロでエンジンがかからなくなる」という警告。その不安を抱えたまま運転するのは、とてもストレスがかかるものです。
ディーラーさんでの高額修理に悩んでいる方も、まずは一度ご相談ください。
遠方の方でも、コンピューター(ECU)をお送りいただければ施工可能です。本来の落ち着いた状態で安心して乗れるよう、状況に合わせてアドバイスいたします。
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