三菱ふそうキャンター SKG-FBA00 外観

今回のお車は三菱ふそうキャンター(SKG-FBA00)。運送業のお客様が毎日の配送に使われている、現役バリバリの一台です。

「AdBlueを補充してみたのに、警告がいっこうに消えないんです」とのこと。荷物を載せて走るトラックですから、ある日とつぜん走行距離制限やエンジン始動不可に陥れば、その日の仕事がまるごと止まってしまいます。配送のスケジュールに穴をあけられない、というのが商用車ならではの切実なところなわけです。

走行距離はすでに26万kmを超えていて、車両としてはよく頑張ってくれている一台。だからこそ「まだまだ走らせたい」というお気持ちもよく分かります。まずは現状を診断機で確認して、対策を考えていきましょう。


入庫時の症状 ── 補充しても消えないAdBlue警告

入庫時のメーター 走行距離264800km 警告灯点灯

入庫時のメーター。走行距離は264,800km。AdBlue・DPF系のインジケーターが表示された状態。

AdBlueは補充済みにもかかわらず、警告が残ったまま。こういう「液は足したのに消えない」というケースでは、タンクの中身そのものよりも、液量を測っているセンサー側に目を向ける必要があります。

このまま放置すると、最終的には残り走行距離のカウントダウンが始まり、ゼロになればエンジンの再始動ができなくなるおそれがあります。商用車にとってはいちばん避けたい展開です。まずは診断機でエラー内容を読み取っていきます。


診断結果:検出されたDTC

診断機XENTRYでの故障コード確認画面 E1060C 6FF1FF

診断機での確認。エンジンコントロールユニットに2件のメモリーが残っていました。

診断機で確認したところ、検出されたコードは以下のとおりです。

● E1060C(1761 12)── 構成部品「AdBlue 充填レベル・センサ」に関する故障
● 6FF1FF(520559 31)── システム・インフォメーション 7

主役は E1060C のほうです。これは「AdBlue充填レベルセンサ」、つまりAdBlueタンクの中の液量を測っているセンサーに関する故障を示しています。

ざっくり言うと、燃料計のフロート(浮き)のような役割で、タンク内の液面の高さを電気信号に変えてECUへ伝えているイメージです。このセンサーが正しい値を返せなくなると、実際にはAdBlueが入っていても「液量が把握できない=システムに異常あり」と判断され、警告が点き続けてしまうわけです。お客様が補充しても消えなかったのは、まさにここが原因と考えられます。

もう一方の 6FF1FF はシステム情報系のメモリーで、AdBlue/SCR系のトラブルに付随して記録されるケースが多いコードです。


原因:高走行による充填レベルセンサの劣化と、部品交換の現実

キャンターをはじめとするディーゼル商用車は、毎日長距離を走り、エンジンの稼働時間も乗用車とは比べものになりません。今回のように26万kmを超えてくると、AdBlueタンクまわりのセンサー類が経年で弱ってくるのは、ある意味で自然な流れでもあります。

では部品交換で直せばいいのでは、と感じる方もいらっしゃるかと思います。ところが、ここがディーゼル商用車のAdBlue関連トラブルの悩ましいところです。

● NOxセンサーは1つ10万円前後と高額で、車両によっては2〜3個使われており、合計で20〜30万円以上になることも
● AdBlueタンク内のセンサーやポンプ系統の交換は30〜50万円規模になるケースも
● 部品の調達そのものが難しく、本国にすら在庫がなく納期未定になることも珍しくない

部品が入らなければ、その間トラックは動かせません。運送のお仕事では、これは売上に直結する深刻な問題なわけです。

そこで今回は、お客様と相談のうえ、ECUのプログラム調整で対応を進めていくことになりました。部品が手配できるまでの間も車両を止めずに運用できるようにする、という考え方です。


解決策:ECUをBOOT接続で読み出し、調整プログラムを書き込む

キャンターのこのECU(Bosch EDC17系)は、コネクタから内部データの読み書きができないタイプでしたのでケースを開けて基板に直接アクセスするBOOT接続という方法を取ります。

取り外したECU本体と作業工具

取り外したECU本体。これからケースを開封していきます。

ECUを開封し内部基板にアクセス 静電気対策の手袋

ケースを開けて内部基板へ。静電気に注意しながらの繊細な作業。整備グループ内でも、ひと手間まちがえて破損させてしまったという報告がちらほらあるほどデリケートな工程です。

FLEXとECUをBOOT接続したセットアップ全景

書き換えツール「FLEX」とECUを接続したセットアップ全景。

基板上のチップにプローブを当ててBOOT接続

基板上の所定のポイントにプローブを当て、BOOT接続を確立していきます。

接続が確立できたら、まずはECU内部のオリジナルデータをまるごと読み出します。

ECUのフルバックアップ読み出し中の画面

オリジナルデータの読み出し中。FLEXの画面には「Mitsubishi Fuso / FUSO_EDC17CP52」と表示されています。

読み出したオリジナルデータの保存

読み出したデータはそのまま保存。万一に備え、データは各所にバックアップする体制を整えています。

続いて、保存したオリジナルデータをもとに、AdBlue/SCR系の過敏な反応を抑える調整データを作成し、書き込んでいきます。

調整データをECUへ書き込み中の画面

調整データをECUへ書き込み中。

書き込み完了 SUCCESS表示

書き込み完了。画面には「SUCCESS」の表示。

作業後の結果

ECUを車両に戻し、あらためて診断機でチェックします。

作業後の診断機画面 故障コードなし

作業後の診断。「故障メモリには故障コードがメモリされていません」── エラーはありません。

作業後のメーター 試運転後 走行距離264817km

試運転を終えたメーター。走行距離は264,817km。落ち着いた状態で運転できることを確認しました。

あれだけ補充しても消えなかったAdBlue警告が、嘘のように静かになりました。最後はしっかり試運転をして、問題なく走れることを確認して完成です。

● AdBlue警告が解除され、エラーメモリーもクリア
● 補充しても消えなかった症状が解消
● 運送業務に支障なく、引き続き現役で運用できる状態に復帰
● プログラムでの調整により、部品交換と比べて大幅にコストダウン


参考データ・作業内容

● 車種:三菱ふそう キャンター(SKG-FBA00)
● エンジン:4P10/総排気量 2,990cc(軽油)
● 初度登録:平成23年(2011年)3月
● 走行距離:264,800km(入庫時)
● ECU:Bosch EDC17CP52
● 接続方式:BOOT接続(ECUケース開封・基板へ直接アクセス)
● 検出DTC:E1060C(AdBlue 充填レベル・センサ)、6FF1FF(システム・インフォメーション 7)
● 対応内容:ECUプログラム調整(AdBlue/SCR系の閾値調整)


ご依頼ありがとうございました。

今回の作業は部品の調達に時間がかかったり、チェックランプ点灯の裏に隠された重大エラーの事などを踏まえた作業となりますので、ご理解いただければ幸いです。

メルセデスベンツ以外でもBMW、フォルクスワーゲン、三菱ふそう(キャンター・ローザ)など商用車を含めて対応可能な場合がありますので、NOxやアドブルーでお困りでしたらお問い合わせお待ちしております。

丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。

重要な補足説明

毎回重ねてお伝えしておりますが、これを「修理」とは言えないと思っています。

NOxにしてもAdBlueにしても、部品はどちらもかなり高額である上に欠品している事が非常に多く、直したくても直せないという状態に陥っている方を非常に多くお見受けしています。

それをプログラムで少し”調整”してあげたり、部品が入荷するまで運用出来ないお車を一部機能に付いてのみ一時的に”撤廃”作業を施して運用出来る様にするというものです。

いま点灯しているエンジンチェックランプの点灯原因・内容が分かってはいるものの、NOxやAdBlueがチェックランプを点灯させ続けている状態では、全く別の重大なトラブルが発生したとしてもドライバーさんは気付く事が出来ません。

なので、過敏に反応する設定となっている”閾値”(いきち)を少しだけ幅を持たせた値に調整する事でエンジンチェックランプの点灯を一時的に抑えることで、それとは全く別で発症した”本当に重大なトラブル”にドライバーさんが早く気付く事が出来るように、本来の意味としての「エンジンチェックランプ」点灯お知らせ機能を取り戻す作業です。

部品が欠品中で納期未定の為車が動かせない(スターターロックが発動してエンジンがかからない)などの場合での、部品が入るまでの一時的な緊急対策措置である事をご理解いただき、部品が入荷した際には元のプログラムに戻して部品を交換するという事を弊社ではお勧めしております。

同作業をご希望される方は、その辺りをご理解下さい。


この技術・情報はまだまだ発展途上の所もあります。

殆どが成功し続けて行く中、それでもごくごく稀にエラーが消えないとか、スターターロックが再発動するとか、そんな事が起こるのがゼロではありません。

この一連の作業内容ができるネットワークは今や10社まで広がり、まだ更に広がる可能性を含んでいます。そしてお互いに情報を共有しつつ、時にはトライ&エラーを続けながら全員で前に進んでいます。

現況では完璧に仕上がった技術では無い事や、もしかするとその「ごく稀」な案件に当たってしまう事もあるかも知れません。不本意ながらご迷惑をおかけしてしまう事だってあると思います。

そんな時こそそのネットワークを駆使し、施工している仲間たちで知恵を絞り出し合って、精一杯対応させて頂きます。全員が本気で取り組んでいますので、暖かい気持ちで見守っていただければ幸いです。

もちろん、その様な事が起こらない様に、日々学び、日々ステップアップし続けていますので、もし「依頼してみたい」と思って頂けた方は、お問い合わせ下さい。


AdBlueの警告でお困りの方へ

「あと数百キロでエンジンがかからなくなる」という警告。その不安を抱えたまま運転するのは、とてもストレスがかかるものです。

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お電話でのご相談:048-798-2922

(受付時間 月~土 9:00~18:00)

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遠方の方でも、コンピューター(ECU)をお送りいただければ施工可能です。本来の落ち着いた状態で安心して乗れるよう、状況に合わせてアドバイスいたします。


これは「修理」ではなく「調整/撤廃」の作業です

今回の作業は、壊れた部品をそっくり交換する「修理」ではありません。AdBlueやNOx関連の部品はどれも高額なうえに欠品していることが非常に多く、直したくても直せないという状態に陥ってしまう方を、当店でも数多くお見かけしてきました。

それをプログラムで少し”調整”してあげたり、部品が入荷するまで運用できないお車を、一部機能についてのみ一時的に”撤廃”する作業を施して、運用できる状態に戻すというものです。

いま点灯している警告灯の原因が分かっていても、AdBlueやNOxが警告を点灯させ続けている状態では、まったく別の重大なトラブルが新たに発生しても、ドライバーさんはそれに気付くことができません。

そこで、過敏に反応する設定となっている”閾値(いきち)”に少しだけ幅を持たせた値に調整することで、いまの警告点灯を一時的に抑えます。すると、それとはまったく別に発症した”本当に重大なトラブル”にドライバーさんが早く気付けるようになり、本来の意味での「警告灯のお知らせ機能」を取り戻すことができるわけです。

部品が欠品中で納期未定のため車が動かせない(カウントダウンが進み、やがてエンジンがかからなくなる)といった場合の、部品が入るまでの一時的な緊急対策措置であることをご理解いただき、部品が入荷した際には元のプログラムに戻して部品を交換することを、当店ではお勧めしております。同作業をご希望される方は、その点をご理解ください。


この技術・情報はまだまだ発展途上のところもあります

ほとんどが成功し続けていく中で、それでもごくごく稀に、エラーが消えないとか、再びカウントダウンが発動するといったことが、ゼロではありません。

この一連の作業ができるネットワークは仲間内で広がりつつあり、お互いに情報を共有しながら、時にはトライ&エラーを重ねつつ、全員で前に進んでいます。

現状では完璧に仕上がった技術ではないことや、もしかするとその「ごく稀」な案件に当たってしまうこともあるかもしれません。不本意ながらご迷惑をおかけしてしまうこともあると思います。そんなときこそ、そのネットワークを活かし、施工している仲間たちで知恵を出し合って、精一杯対応させていただきます。

もちろん、そのようなことが起こらないよう日々学び、ステップアップを続けています。「依頼してみたい」と思っていただけた方は、どうぞお問い合わせください。

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