「直しても、直しても、またすぐ同じエラーが出る」――プジョーやシトロエンの BlueHDi オーナーからのお問い合わせで、この手のご相談が本当に増えています。
今回のご連絡は 栃木県下都賀郡 のお客様から。前年11月のディーラー車検前後にエラー警告が点灯し、12月にアドブルーメタリングバルブを交換したものの、すぐに同じ症状が再発。年明けに再度ディーラーへ預けたところ、今度は「排ガス部分に煤が溜まっているので部品交換を」と言われたそうです。
ただ、その部品はお客様ご自身の記憶でも 過去に同じエラーで交換済み。繰り返しの部品交換に不信感を覚え、「エンジンの不調は特にないのに、何度直しても同じエラーが出る」という違和感からネットで情報を集め、当店の記事をきっかけにお問い合わせをいただきました。
車両は プジョー リフター(K9型/2020年式/走行距離 77,423km)。メーターには「Engine fault: Repair needed」に加えて、AdBlue の 「Starting impossible in 250km」(あと250kmで始動不可) というカウントダウンまで発動している状況でした。

入庫の経緯と症状
お問い合わせの段階で、お客様からはこれまでの経緯をかなり具体的にお聞きしていました。時系列で整理するとこういった流れです。
● 2025年11月:ディーラーにて車検。この前後でエラー警告が点灯
● 2025年12月:アドブルー噴射機(SCRインジェクター)を交換
● まもなく:同じエラーが再発
● 2026年1月:再度ディーラーに預ける
● 先日:「排ガス部分に煤が溜まっているので部品交換を」と提案される
● ただし、この部品は過去にも同様のエラーで交換済み
つまり、同じ系統の部品を何度交換しても、しばらくするとまた同じ警告が戻ってくる というループに入ってしまっている状態です。お客様ご自身も「エンジンの不調は特にないのに、何度直しても同じエラーが出る」と冷静に観察されていて、対症療法の限界を感じたところで当店の記事にたどり着かれた、というのが今回のご縁でした。
ご入庫時のメーター表示がこちらです。

しばらくすると、メーター中央の表示が切り替わり、AdBlue マークとともに 「Emissions fault: Starting impossible in 250km」 が出現。いわゆるアドブルーのカウントダウンです。

ベンツの場合は「残り◯◯km以内にエンジン始動不可」と日本語で表示されますが、プジョー/シトロエン/DS 系はこのように 英語表示 のことも多く、オーナー様が正しく意味を理解しないまま走ってしまい、気づいたら残りわずか、というケースも少なくありません。
今回は、これまでの修理履歴もあってお客様がしっかり内容を把握されていたこともあり、残り距離に余裕があるうちにご連絡をいただけたのが幸いでした。
診断結果:検出されたDTC
AUTEL MaxiSys Elite で全システムスキャンを実施。スキャン結果の一覧はこちらです。

ボディ系やコンフォート系に一時的なコードも挙がっていますが、今回のカウントダウンを発動させている本丸は エンジンマネージメントECU(CMM_MD1CS003) の2件です。

エンジン系のDTCを抜き出すと以下の2件です。
● P1412:09 パティキュレート・フィルタ過負荷 — 不具合が特定できません
● P20EE:92 NOx還元システムの浄化(効果) — 性能または動作が適合しない
カウントダウンを発動させているのは P20EE。これは排気ガス中のNOx濃度を、AdBlue噴射によって所定のレベルまで下げられていない、と車両が判定している状態です。
P1412(DPF過負荷)も同時発生していますが、「不具合が特定できません」の通りサブコードレベルでは原因を絞り込めず、SCR側の不調に引っ張られて記録されているケースが濃厚です。
原因:SCR/NOx還元システムの機能低下
今回のお客様のように、同じ部品を何度交換してもまたエラーが戻ってくる――これはプジョー/シトロエンの BlueHDi ではかなりよく見られるパターンです。
P20EE が厄介なのは、これが「SCRのNOx還元効率が規定値を下回っている」という “結果”を示す判定コード だという点。原因となりうる箇所は、NOxセンサー、AdBlueインジェクター、AdBlueポンプ、SCR触媒本体、上流側の排気漏れなど複数箇所にまたがっていて、DTCだけでは主因を一つに絞り込めません。
その結果、「センサーだけ交換」→しばらくしてまた同じコード、「今度は煤関連の部品交換」→それでも再発、というケースが少なくありません。主な理由としては、
● 実際の主因が別の部品だったケース(例:NOxセンサーを替えたが、本当はAdBlueインジェクターのスプレー不良が主因だった)
● センサー・触媒・インジェクターが同時並行で劣化していて、1箇所を新品にしても他の劣化が残っているケース
● 部品交換後に ECU側の学習値/アダプテーションがリセットされていない ケース
● 上流側の排気漏れや、短距離走行による触媒の低温化など、部品以外の要因 が絡んでいるケース
――といったパターンが挙げられます。「エンジンの不調は特にないのに、警告だけが何度も戻ってくる」というお客様の状況は、この中のどれか、あるいは複数が重なっていることが濃厚です。
P20EE の原因として、プジョー/シトロエンの BlueHDi でよく現場に挙がるのは次のあたりです。
● NOxセンサー(上流/下流)の鈍化や故障
● SCRインジェクター(AdBlue噴射)の詰まり・スプレー不良
● AdBlueポンプの圧力不足や劣化
● SCR触媒そのものの機能低下
● 排気系の微小リークによる誤検知
いずれも「走行距離より使用年数」「短距離走行の多さ」で進行する傾向があり、77,000km台という距離でも十分に発症します。
部品交換の現実
仮に正攻法で部品交換を重ねていく場合、プジョー/シトロエンのAdBlue関連部品は、
● NOxセンサー:1本あたり数万円〜10万円超、車両によっては2本同時交換推奨
● AdBlueポンプ/インジェクターASSY:15〜30万円前後
● SCR触媒(マフラー一体型):50万円を超えることも
……という金額感になります。しかも部品そのものが 本国欠品で数ヶ月待ち になるケースも珍しくなく、その間はカウントダウンが進んでいずれエンジン始動不可。日常の足として使えない期間が長期化するのは避けたい、というお客様がほとんどです。
そして今回のように、「前にも同じ部品を交換したのに、またそこを交換」 という提案をされてしまうと、コスト面だけでなく「本当にこれで直るのか?」という信頼の部分でも厳しくなってきます。
お客様とご相談の結果、今回は 「これ以上同じ部品交換を繰り返す前に、ECU側の判定ロジックを調整してループから抜け出したい」 というご意向を受けて、AdBlue/SCRシステムの無効化プログラムで対応する方針で作業を進めました。
解決策:BENCH接続によるECU調整
リフター/ベルランゴ/コンボなどの 1.5 BlueHDi に搭載されているのは、ボッシュの MD1CS003。近年の欧州車に広く採用されている新世代のECUで、セキュリティが強化されているため2022年あたりから 書き換えには制限 があります。
そのため、作業は ECUを車両から取り外し、FLEXツールに直接結線する BENCH接続 での対応となります。ケースを開封する BOOT接続までは必要なく、ECU外部のコネクタに専用ハーネスを差し込む形です。


1. 接続の確立とオリジナルデータの読み出し
まずはECUとの通信を確立し、中身をそのまま吸い出します。書き換え作業は “元に戻せる状態”を確保してから が鉄則です。


2. フルバックアップの保存
読み出しが完了すると保存ダイアログが出ます。読み出したデータは 当店内の複数箇所に分散してバックアップ を保存しています。万が一の紛失や破損にも対応できるよう、データの管理はかなり気を使っているところです。

3. 無効化データの作成と書き込み
吸い出したオリジナルデータを元に、AdBlue/SCR関連の判定ロジックを調整した書き込み用データを作成。準備が整ったら ECU へ書き戻します。


作業後の結果
ECU を車両に戻し、診断機でDTCをクリア。試運転を行った上でメーター表示を確認しました。

修理後の結果は以下のとおりです。
● AdBlueカウントダウン表示(Starting impossible in 250km)が解除
● 「Engine fault: Repair needed」メッセージも消灯
● エンジンマネージメントECUのDTC(P20EE/P1412)クリア済み
● 試運転で再発がないことを確認
● 部品交換による高額修理を回避し、コストを大幅に抑えて対応完了
作業にあたっての注意事項
今回のプログラム調整は「修理」ではなく、SCR関連の判定を無効化することで警告とカウントダウンを止める”調整/撤廃”作業 です。センサーやインジェクターそのものを新品に直しているわけではない、という点はきちんとお伝えしています。
そのうえで、部品の入荷状況が改善した際には、正規の部品交換に切り替えていただくこともできます。当店で施工した車両であれば、プログラムを元に戻した上での対応も可能です。
また、AdBlue/SCR関連の ECU 調整は、メーカーや ECU のバージョン、車両の個体差によって挙動が変わるケースがあり、現在進行形で研究が続いている領域でもあります。同業者ネットワーク内での情報共有を続けながら、改善を重ねているのが正直なところです。
今回の作業まとめ
● お客様:栃木県下都賀郡
● 車両:プジョー リフター(K9)/2020年式/走行距離 77,423km
● ECU:Bosch MD1CS003
● 接続方式:BENCH接続(FLEXツール)
● 症状:Engine fault 表示、AdBlue「Starting impossible in 250km」カウントダウン
● DTC:P20EE:92(NOx還元システム浄化性能)、P1412:09(DPF過負荷)
● 対応:AdBlue/SCR 無効化プログラムによる調整
お問い合わせについて
ご依頼ありがとうございました。
今回の作業は、部品の調達状況やチェックランプ点灯の裏に隠れた他エラーの確認なども踏まえた上で進めておりますので、日数をいただく場合があります。ご理解いただければ幸いです。
プジョーやシトロエンはもちろん、メルセデスベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディなどの輸入ディーゼル車も対応可能な場合があります。NOx やアドブルーでお困りでしたら、お気軽にお問い合わせください。
● 初めての問い合わせで不安な方
● 高額見積もりを提示されて迷っている方
● どこのお店に依頼していいか分からない方
経験豊富な整備士が、状況に合わせたアドバイスをいたします。遠慮なさらずにお問い合わせください。
重要な補足説明
毎回重ねてお伝えしておりますが、これを「修理」とは言えないと思っています。
NOxにしてもAdBlueにしても、部品はどちらもかなり高額である上に欠品している事が非常に多く、直したくても直せないという状態に陥っている方を非常に多くお見受けしています。
それをプログラムで少し”調整”してあげたり、部品が入荷するまで運用出来ないお車を一部機能に付いてのみ一時的に”撤廃”作業を施して運用出来る様にするというものです。
いま点灯しているエンジンチェックランプの点灯原因・内容が分かってはいるものの、NOxやAdBlueがチェックランプを点灯させ続けている状態では、全く別の重大なトラブルが発生したとしてもドライバーさんは気付く事が出来ません。
なので、過敏に反応する設定となっている”閾値”(いきち)を少しだけ幅を持たせた値に調整する事でエンジンチェックランプの点灯を一時的に抑えることで、それとは全く別で発症した”本当に重大なトラブル”にドライバーさんが早く気付く事が出来るように、本来の意味としての「エンジンチェックランプ」点灯お知らせ機能を取り戻す作業です。
部品が欠品中で納期未定の為車が動かせない(スターターロックが発動してエンジンがかからない)などの場合での、部品が入るまでの一時的な緊急対策措置である事をご理解いただき、部品が入荷した際には元のプログラムに戻して部品を交換するという事を弊社ではお勧めしております。
同作業をご希望される方は、その辺りをご理解下さい。
この技術・情報はまだまだ発展途上の所もあります。
殆どが成功し続けて行く中、それでもごくごく稀にエラーが消えないとか、スターターロックが再発動するとか、そんな事が起こるのがゼロではありません。
この一連の作業内容ができるネットワークは今や10社まで広がり、まだ更に広がる可能性を含んでいます。そしてお互いに情報を共有しつつ、時にはトライ&エラーを続けながら全員で前に進んでいます。
現況では完璧に仕上がった技術では無い事や、もしかするとその「ごく稀」な案件に当たってしまう事もあるかも知れません。不本意ながらご迷惑をおかけしてしまう事だってあると思います。
そんな時こそそのネットワークを駆使し、施工している仲間たちで知恵を絞り出し合って、精一杯対応させて頂きます。全員が本気で取り組んでいますので、暖かい気持ちで見守っていただければ幸いです。
もちろん、その様な事が起こらない様に、日々学び、日々ステップアップし続けていますので、もし「依頼してみたい」と思って頂けた方は、お問い合わせ下さい。
AdBlueの警告でお困りの方へ
「あと数百キロでエンジンがかからなくなる」という警告。その不安を抱えたまま運転するのは、とてもストレスがかかるものです。
ディーラーさんでの高額修理に悩んでいる方も、まずは一度ご相談ください。
遠方の方でも、コンピューター(ECU)をお送りいただければ施工可能です。本来の落ち着いた状態で安心して乗れるよう、状況に合わせてアドバイスいたします。
修理のお見積もり後、もし金額面でお乗り換えをご検討される場合は
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