
消しても消しても、また点灯する。
そんな状況が2か月ほど続いていた、とのことでした。茨城県からお問い合わせいただいたオーナー様の愛車は、メルセデスベンツ E220 BlueTEC(W212)ワゴン。ある時期からAdBlue(アドブルー)とNOxシステムの警告が繰り返し点灯するようになり、近所の修理店でそのつどエラーコードをクリアしてもらいながら乗り続けていたそうです。
しかしクリアしてもまた点く、クリアしてまた点く……2か月間のいたちごっこの末、「オートプラネット様が数多くの実績をお持ちなので、ぜひお願いしたい」とネット検索を経て当店へご連絡をいただきました。
エラーコードの消去だけを繰り返していても、根本にある故障は何も変わりません。しっかり診断した上で対応策を検討しましょう、ということでお車をお持ち込みいただき、今回の作業に至りました。
入庫の経緯と症状
お問い合わせの内容を整理すると、状況はこうでした。
- 約2か月前からAdBlue警告・NOxエラーが繰り返し点灯
- 近所の修理店でエラーコードをクリアするたびに一時的に消灯するが、しばらくするとまた再発
- 走行距離は約60,000km(XENTRY診断時の読み取り値)
走行6万km台というまだ比較的若い車両でも、AdBlueシステムの不具合は起こります。そしてエラーコードのクリアで対処し続けるのは、いわば警告を「見えなくしているだけ」の状態。制御ユニットは同じ異常を検知し続けており、いつかはより深刻な症状へ進行するリスクをはらんでいます。
特に気になるのが、エンジンECU側に「走行距離制限コード」が記録されていた点です。この状態を放置すると、最終的にはエンジン始動不可に至る可能性があります。今回はそうなる前にご相談いただけました。
診断結果:検出されたDTC
XENTRY(メルセデスベンツ純正診断システム)でシステム全体をスキャンしました。SCRユニット(N118/5・選択触媒還元)と、エンジンECUの両方にAdBlue関連の故障コードが重複して蓄積されていました。

SCR02(N118/5)で検出されたDTC
- P13DF00:AdBlue®システムに機能障害があります
- P20EA00:「AdBlue®供給」リレー用アウトプットに機能障害があります(カットオフが早すぎる)
- P20EA92:「AdBlue®供給」リレー用アウトプットに機能障害があります(カットオフが早すぎる)。機能または指示が正しくありません。
- P208B00:AdBlue®サプライ・ポンプのアウトプットに機能障害があります

N3/9 エンジンECU(CDI3)で検出されたDTC
- P13E400:AdBlue®システムの機能障害のため、残りの走行距離が制限されています
- P204F96:AdBlue®システム(シリンダ・バンク1)に機能障害があります。内部の構成部品の故障があります
- P13DF09:AdBlue®システムに機能障害があります。構成部品の故障があります
- P140300:「AdBlue®」コントロール・ユニットに機能障害があります
合計8件。SCRユニットとエンジンECUの両方にエラーが入っていました。エンジンECU側のP13E400「残りの走行距離が制限されています」が記録されているのも見逃せないポイントです。近所の修理店でのエラークリアはこうしたコードも一時的に消しているわけですが、根本原因が残っている以上、制御ユニットはすぐに同じ異常を再検知してしまいます。
原因:AdBlueサプライポンプ・SCRシステムの複合故障
今回のDTCの中心は、AdBlueをSCR触媒へ送り込むサプライポンプとその制御系統の異常です。ポンプが正常に機能しないと、SCRによる排気浄化が成立しないと判断され、複数の故障コードが連鎖的に記録される仕組みになっています。
ではディーラーや修理店で部品交換をしようとするとどうなるか。
- AdBlueサプライポンプ:部品代のみで数万円〜
- NOxセンサー(W212では前後2個使用):1個10万円前後、2個交換で20万円以上になることも
- AdBlueタンク内の関連部品も同時交換が必要な場合:30〜50万円規模に
さらに現実的な問題として、部品の調達が年々困難になっています。W212は生産終了から年数が経過しており、本国メルセデスベンツの倉庫にすら在庫がないというケースも珍しくありません。部品が来るまで車を動かせない、という状況に追い込まれてしまうこともあります。
今回、お客様と協議した結果、部品交換ではなくECUプログラムの調整(AdBlueシステム無効化)で対応する方針となりました。
解決策:BENCH接続によるECUプログラム調整
W212 E220 BlueTECに搭載されているエンジンECUはDelphi製のユニット(CRD3X.X TC1797)です。このECUへのアクセスには、車両から取り外した状態でBENCH接続を使用します。
BENCH接続とは、ECUを車外に取り出し、専用の外部コネクターを介してECU書き換え機と接続する方法です。ECUのケースを開封することなく内部データの読み書きが行えます。当店では多くのベンツ系ECU作業をこの方法で対応しており、車両本体へのダメージリスクを最小限に抑えながら精度の高い作業が可能です。


作業の流れは以下のとおりです。
- 車両よりECUを取り外す
- BENCH接続を確立し、EXT EEPROMデータを読み出して接続を確認
- フルバックアップ(FULL BACKUP)でオリジナルデータを完全保存
- バックアップデータを複数箇所に保管
- AdBlue無効化処理を施したデータを作成
- INT FLASHへ書き込み
- ECUを車両に戻し、動作確認・最終チェック



バックアップの徹底は、当店の作業における最重要ステップのひとつです。万が一の書き込みエラーや不測の事態に備え、オリジナルデータは確実に保管してから次の工程へ進みます。


作業後の結果
ECUを車両に戻し、XENTRYで最終チェックを実施しました。先ほど検出されていた8件のDTCはすべてクリアされ、新たなエラーの発生もありません。

そしてメーター内の表示は……

試運転も問題なく完了。2か月間ずっと点き続けていた警告灯が、ようやく静まりました。
修理後の結果まとめ
- AdBlue関連の警告がすべて消灯
- 走行距離制限コード(P13E400)も解除
- SCRユニット・エンジンECUの両システムでエラーゼロを確認
- 試運転でも異常なし、安心して日常走行できる状態に復帰
- 部品交換と比較してコストを大幅に抑えられました
この作業について
今回の作業はAdBlueシステムの「修理」ではなく、ECUプログラムの「調整(無効化)」です。
AdBlueシステムには「閾値(いきち)」と呼ばれる基準値が設定されており、SCR触媒による排気浄化が正常に成立しないと判断されると、警告→走行距離制限→エンジン始動不可という段階を踏んでいきます。今回の作業では、この閾値をECUレベルで調整することで、システムの介入を無効化しています。
部品の入手が可能で、修理費用や修理期間が許容できる状況であれば、部品交換による根本修理を検討されることをお勧めしています。ただし前述のとおり、W212世代の部品は調達が年々難しくなっており、費用・期間・実現性を踏まえると、プログラム調整が現実的な選択肢になるケースも多くあります。
また、この分野の技術は日々進化しており、対応できる車種・ECUの種類も増え続けています。一方で、すべての状態・すべての車両に対応できるとは限りません。まずはご相談ください。状況に合わせてアドバイスいたします。
参考データ・作業内容
- 車種:メルセデスベンツ E220 BlueTEC(W212)ワゴン
- 年式:平成24年(2012年)
- エンジン:OM651
- 走行距離:約60,556km(XENTRY診断時の読み取り値)
- 症状:AdBlue・NOxエラーが約2か月にわたり繰り返し点灯
- 接続方式:BENCH接続(ECU車外取り出し、ケース開封なし)
- 対象ECU:Delphi(CRD3X.X TC1797)
- 検出DTC(SCR02):P13DF00 / P20EA00 / P20EA92 / P208B00
- 検出DTC(CDI3):P13E400 / P204F96 / P13DF09 / P140300
- 作業内容:ECU取り外し → BENCH接続 → EXT EEPROM読み出し確認 → フルバックアップ → AdBlue無効化データ作成・INT FLASH書き込み → 最終確認
- 作業後:全DTC消去、メーター「故障はありません」確認、試運転完了
ご依頼ありがとうございました。
今回の作業は部品の調達に時間がかかったり、チェックランプ点灯の裏に隠された重大エラーの事などを踏まえた作業となりますので、ご理解いただければ幸いです。
メルセデスベンツ以外でもBMWやフォルクスワーゲンなども対応可能な場合がありますので、NOxやアドブルーでお困りでしたらお問い合わせお待ちしております。
丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。
重要な補足説明
毎回重ねてお伝えしておりますが、これを「修理」とは言えないと思っています。
NOxにしてもAdBlueにしても、部品はどちらもかなり高額である上に欠品している事が非常に多く、直したくても直せないという状態に陥っている方を非常に多くお見受けしています。
それをプログラムで少し”調整”してあげたり、部品が入荷するまで運用出来ないお車を一部機能に付いてのみ一時的に”撤廃”作業を施して運用出来る様にするというものです。
いま点灯しているエンジンチェックランプの点灯原因・内容が分かってはいるものの、NOxやAdBlueがチェックランプを点灯させ続けている状態では、全く別の重大なトラブルが発生したとしてもドライバーさんは気付く事が出来ません。
なので、過敏に反応する設定となっている”閾値”(いきち)を少しだけ幅を持たせた値に調整する事でエンジンチェックランプの点灯を一時的に抑えることで、それとは全く別で発症した”本当に重大なトラブル”にドライバーさんが早く気付く事が出来るように、本来の意味としての「エンジンチェックランプ」点灯お知らせ機能を取り戻す作業です。
部品が欠品中で納期未定の為車が動かせない(スターターロックが発動してエンジンがかからない)などの場合での、部品が入るまでの一時的な緊急対策措置である事をご理解いただき、部品が入荷した際には元のプログラムに戻して部品を交換するという事を弊社ではお勧めしております。
同作業をご希望される方は、その辺りをご理解下さい。
この技術・情報はまだまだ発展途上の所もあります。
殆どが成功し続けて行く中、それでもごくごく稀にエラーが消えないとか、スターターロックが再発動するとか、そんな事が起こるのがゼロではありません。
この一連の作業内容ができるネットワークは今や10社まで広がり、まだ更に広がる可能性を含んでいます。そしてお互いに情報を共有しつつ、時にはトライ&エラーを続けながら全員で前に進んでいます。
現況では完璧に仕上がった技術では無い事や、もしかするとその「ごく稀」な案件に当たってしまう事もあるかも知れません。不本意ながらご迷惑をおかけしてしまう事だってあると思います。
そんな時こそそのネットワークを駆使し、施工している仲間たちで知恵を絞り出し合って、精一杯対応させて頂きます。全員が本気で取り組んでいますので、暖かい気持ちで見守っていただければ幸いです。
もちろん、その様な事が起こらない様に、日々学び、日々ステップアップし続けていますので、もし「依頼してみたい」と思って頂けた方は、お問い合わせ下さい。
AdBlueの警告でお困りの方へ
「消しても消しても再発する」そのエラー、クリアを繰り返すだけでは根本解決になりません。放置すれば走行距離制限、最終的にはエンジン始動不可へと進行します。
ディーラーさんでの高額修理に悩んでいる方も、まずは一度ご相談ください。
遠方の方でも、コンピューター(ECU)をお送りいただければ施工可能です。本来の落ち着いた状態で安心して乗れるよう、状況に合わせてアドバイスいたします。
修理のお見積もり後、もし金額面でお乗り換えをご検討される場合は
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