長野県からBMW X5(E70)をお持ち込みいただきました。ご相談の内容は、アドブルー警告の表示です。
メーター中央に「NO START IN 348 km」という赤い警告が出ており、iDriveディスプレイにも「AdBlue最低! 航続距離: 348 km。AdBlueを直ちに補充しなければ、エンジンを始動できません」というメッセージが繰り返し表示されている状態でした。残り348キロ—この数字が0に近づいたとき、次のエンジン始動ができなくなります。
長野という土地柄、山間部でのトラブルは特にリスクが高く、なんとかしたいというお気持ちは十分にわかります。当店で診断してみると、SCR(排気浄化)システムを中心に7件の故障コードが検出。アドブルーの補充では解決できない状態でした。お客様とご相談のうえ、ECUプログラムによるアドブルーシステムの無効化で対応することになりました。
入庫の経緯と症状
長野県のオーナー様より、BMW X5(E70 / LDA-ZW30S)をお預かりしました。走行距離は158,886km。

症状のきっかけは、エンジン始動時に毎回表示されるアドブルー警告です。メーター内とiDriveの両方に警告が出ており、無視できない状態になっていました。


「NO START IN 348 km」という表示は、残り走行距離が0になった時点でエンジンの再始動が禁止されるカウントダウンです。補充すれば表示が消えることもありますが、今回はシステム側の異常が関係しているため、補充では根本的な改善は見込めません。
診断結果:検出されたDTC
診断機でスキャンすると、DDE(ディーゼル エレクトロニクス)システムから7件の故障コードが検出されました。

検出された故障コードは以下の通りです(ステータスが「存在」のもの)。
- 00474C:SCRシステム、警告およびスイッチオフになる状況、警告ステージ1
- 004748:SCRシステム 警告およびシャットダウンシナリオ、警告ステージ1
- 00049A6:LINバス:通信エラー
- 00480F:SCRキャタライザ後の窒素酸化物(NOx)センサー、S-CAN
- 004BAC:還元剤 アクティブ タンク フューエル レベル センサー、信号
コードを整理すると、状況の深刻さが見えてきます。
00474C / 004748はSCRシステムそのものへの警告で、「スイッチオフになる状況」「シャットダウンシナリオ」という言葉通り、システムが走行制限を発動する段階まで進んでいます。00480FはSCRキャタライザの後段に位置するNOxセンサーの通信異常、004BACはアドブルータンク内のレベルセンサーの信号異常、そして00049A6はLINバス(車内の制御通信)の通信エラーです。
SCRシステムの制御、センサーの通信、タンク内部品と、複数の系統にまたがって異常が出ているわけです。これは比較的重症な状態と言えます。
NOxセンサーは1つあたり10万円前後と高額な部品で、E70の場合は複数個使用されています。加えてタンク内のポンプやレベルセンサーも交換となれば、部品代と工賃を合わせると30万円を超えることも珍しくありません。しかも、こうした部品は国内在庫が潤沢なわけではなく、本国からの取り寄せになるケースもあります。調達を待つあいだ、車を使えない期間が生じてしまうのも現実です。
お客様とご相談の結果、部品交換ではなくECUプログラムによるアドブルーシステムの無効化で対応することになりました。
作業内容:BENCH接続によるECUプログラム調整
今回のECUはBosch製のEDC17CP45。BMW X5(E70)のディーゼルエンジン制御を担うユニットです。
作業は車両からのECU取り外しからはじまります。


取り外したECUは、専用の作業台へ移して接続します。今回採用した方式はBENCH接続です。
BENCH接続とは、ECUのケースを開封せず、外部コネクターにFLEXツールのケーブルを繋いでデータの読み書きを行う方法です。内部の基板に直接触れることなく作業ができるため、ECU本体へのリスクを最小限に抑えながら精密なプログラム処理が行えます。


接続が完了したら、まずオリジナルのデータをフルバックアップします。読み出したデータは万が一のトラブルに備えて複数箇所に保存しています。作業前のこの工程を丁寧に行っておくことが、安全な施工の前提となりますので、いつも念入りにやっています。


バックアップが完了したら、読み出したデータをもとにアドブルーシステムを無効化するプログラムを作成し、書き込みへと進みます。


書き込みが完了したECUを車両へ戻し、アドブルータンクにつながるコネクターの切り離し工程へ。その後、診断機で最終確認を行いました。
作業後の結果
診断機でのチェックでは、アドブルー・SCR関連のエラーコードはすべて解消されています。そして気になっていたメーターの表示は—

「NO START IN 348 km」の表示は消え、メーターはすっきりした状態に戻りました。試運転でも異常はなく、問題なく走行できています。
修理後の結果まとめ
- AdBlue警告(航続距離カウントダウン)の解除
- 「NO START IN ○○km」表示の消灯
- SCR関連エラーコードのクリア(00474C / 004748 / 00480F / 004BAC 他)
- エンジンチェックランプの消灯
- 部品交換なしでコストを大幅に抑えた施工
ご依頼ありがとうございました。
今回の作業は部品の調達に時間がかかったり、チェックランプ点灯の裏に隠された重大エラーの事などを踏まえた作業となりますので、ご理解いただければ幸いです。
メルセデスベンツ以外でもBMWやフォルクスワーゲンなども対応可能な場合がありますので、NOxやアドブルーでお困りでしたらお問い合わせお待ちしております。
丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。
重要な補足説明
毎回重ねてお伝えしておりますが、これを「修理」とは言えないと思っています。
NOxにしてもAdBlueにしても、部品はどちらもかなり高額である上に欠品している事が非常に多く、直したくても直せないという状態に陥っている方を非常に多くお見受けしています。
それをプログラムで少し”調整”してあげたり、部品が入荷するまで運用出来ないお車を一部機能に付いてのみ一時的に”撤廃”作業を施して運用出来る様にするというものです。
いま点灯しているエンジンチェックランプの点灯原因・内容が分かってはいるものの、NOxやAdBlueがチェックランプを点灯させ続けている状態では、全く別の重大なトラブルが発生したとしてもドライバーさんは気付く事が出来ません。
なので、過敏に反応する設定となっている”閾値”(いきち)を少しだけ幅を持たせた値に調整する事でエンジンチェックランプの点灯を一時的に抑えることで、それとは全く別で発症した”本当に重大なトラブル”にドライバーさんが早く気付く事が出来るように、本来の意味としての「エンジンチェックランプ」点灯お知らせ機能を取り戻す作業です。
部品が欠品中で納期未定の為車が動かせない(スターターロックが発動してエンジンがかからない)などの場合での、部品が入るまでの一時的な緊急対策措置である事をご理解いただき、部品が入荷した際には元のプログラムに戻して部品を交換するという事を弊社ではお勧めしております。
同作業をご希望される方は、その辺りをご理解下さい。
この技術・情報はまだまだ発展途上の所もあります。
殆どが成功し続けて行く中、それでもごくごく稀にエラーが消えないとか、スターターロックが再発動するとか、そんな事が起こるのがゼロではありません。
この一連の作業内容ができるネットワークは今や10社まで広がり、まだ更に広がる可能性を含んでいます。そしてお互いに情報を共有しつつ、時にはトライ&エラーを続けながら全員で前に進んでいます。
現況では完璧に仕上がった技術では無い事や、もしかするとその「ごく稀」な案件に当たってしまう事もあるかも知れません。不本意ながらご迷惑をおかけしてしまう事だってあると思います。
そんな時こそそのネットワークを駆使し、施工している仲間たちで知恵を絞り出し合って、精一杯対応させて頂きます。全員が本気で取り組んでいますので、暖かい気持ちで見守っていただければ幸いです。
もちろん、その様な事が起こらない様に、日々学び、日々ステップアップし続けていますので、もし「依頼してみたい」と思って頂けた方は、お問い合わせ下さい。
AdBlueの警告でお困りの方へ
「あと数百キロでエンジンがかからなくなる」という警告。その不安を抱えたまま運転するのは、とてもストレスがかかるものです。
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