プジョーリフター 新潟県柏崎市より入庫 AdBlue警告

今回のプジョー リフター。新潟県柏崎市から当社へ入庫。

今回のお車は、プジョー リフター(2020年式・型式YH01/走行9万kmほど)。新潟県柏崎市のオーナー様から、「アドブルーは満タンに入っているのに、警告灯が消えない」というご相談をいただきました。

しかも、ディーラーさんに持ち込んで点検してもらったところ「異常なし」と言われて返却。ところが、その1週間後にまた警告灯が点いてしまったとのこと。アドブルーの警告に加えて、スパナマーク(整備要求)とエンジンチェックランプまで、3つのランプが同時に点いている状況です。

このオーナー様、実は昨年もアドブルー関連のトラブルで突然クルマが動かなくなり、バッテリー交換なども含めて総額40万円ほどの修理をされたばかり。中古で購入されて、まだローンも4年残っているとのことで、「またディーラーで新品交換になるのだろうか…」という不安から、藁をもすがる思いで当社のリフターの記事を見つけてご連絡くださいました。

まずは車両をお預かりして、現状を確認していきます。

遠方・新潟からの引き取り

新潟県柏崎市という遠方でしたので、自動車保険のロードサービスも活用しながら、当社で引き取りにうかがいました。

プジョーリフター 積載車で新潟から陸送 ロードサービス

積載車に載せて、新潟から当社まで陸送。

任意保険(自動車保険)に付いているロードサービスは、こうした遠方からの搬送にも使えるケースがあります。等級や保険料に影響しない形で利用できることも多いので、「遠くて運べない」とあきらめてしまう前に、一度確認してみる価値はあるわけです。

症状:アドブルーは満タン、それでも警告が消えない

お預かりした時点でのメーターがこちら。

プジョーリフター メーター Engine fault Repair needed 表示

メーター中央に「Engine fault: Repair needed(エンジン故障:要修理)」の表示。

しばらくすると、表示が切り替わりました。

プジョーリフター AdBlue Starting impossible in 550km カウントダウン

「Emissions fault: Starting impossible in 550km」──あと550kmでエンジンが再始動できなくなる、という最終警告。

お問い合わせをいただいた時点では「あと800km」と表示されていたのですが、引き取り・入庫の頃には550kmまで減っていました。カウントダウンは走った分だけ着実に進んでいくので、こうなると時間との勝負になってきます。

ここでポイントになるのが、「アドブルーは満タンなのに警告が消えない」という点。アドブルーの残量警告であれば、液を補充すれば消えるはずです。それでも消えず、しかもカウントダウンまで始まっているとなると、液の量ではなく、システム側で「うまく浄化できていない」と判断されているケースが多いわけです。

診断結果:検出されたDTC

診断機をつないで、記録されているトラブルコードを読み取ります。

プジョーリフター 診断機 トラブルコード U1200 P20EE

診断機で読み取ったトラブルコード。U1200とP20EEの2つが記録されていました。

● U1200:NOx還元システム(CANネットワーク)— 受信したデータが無効
● P20EE:NOx還元システムの浄化(効果)— 性能または動作が適合しない

少しかみ砕いてみます。

P20EEは、「SCR(尿素を使ってNOxを無害化する仕組み)の浄化効率が、規定のレベルを下回っている」という“結果”を示す判定コードです。ここが少し厄介なところで、P20EEは原因そのものをピンポイントで指し示すコードではありません。NOxセンサー、アドブルーのインジェクターやポンプ、SCR触媒本体、上流側の排気漏れなど、原因になりうる箇所は複数にまたがっていて、このコードひとつで主因を一点に絞り込むことは難しい、というのが実情です。

もう一方のU1200は、NOx還元システムに関わるCAN通信(クルマの中の電子部品どうしがやり取りするネットワーク)で、受信したデータが無効、という通信系のコードです。

そして、この2つのコードにはどちらも「一時的」という区分がついていました。ここが、今回の症状を読み解くカギになります。

なぜディーラーで「異常なし」だったのか

先ほどのコードが「一時的(間欠的)」に記録されるものだった、という点。これが「ディーラーで点検したら異常なし」と言われた経緯と、よく符合します。

間欠的に出るコードは、点検したそのタイミングでたまたま出ていないと、「今は異常が確認できません」という判断になることがあります。ところが、しばらく走るとまた条件がそろって記録され、警告が戻ってくる──今回の「返却して1週間でまた点灯」という流れは、まさにこのパターンだと考えられます。

これは決して、ディーラーさんの点検が雑だった、という話ではありません。出たり消えたりするコードは、それだけ捉えづらいものなわけです。

部品交換で直すとどうなるか

では、正攻法で部品を交換して直すとどうなるか。

アドブルー/NOx系の部品は、とにかく高額です。NOxセンサーは1つあたり10万円前後で、車種によっては複数使われています。アドブルータンク側のポンプやセンサーに不具合があれば、数十万円コースになることも珍しくありません。しかも近年は部品の入荷待ちが長期化していて、本国にも在庫がなく、数ヶ月単位でクルマが使えなくなるケースも出ています。

このオーナー様の場合、すでに昨年、アドブルー関連で40万円ほどをかけたばかり。それでもまた警告が出てしまっている状況で、ここからさらに高額な部品交換に踏み切るのは、ローンも残る中で現実的に厳しい──そうしたご事情も踏まえて、今回はECUのデータ書き換えによるアドブルー撤廃(無効化)プログラムで進める方針となりました。

解決策:ECUプログラムの調整(撤廃)

ここからが作業です。

まずはECU(エンジンコントロールユニット)を取り外し、ベンチ上で作業できるように準備します。静電気には十分注意しながら進めます。整備仲間内でも、うっかり破損させてしまったという報告がちらほらあるほど、扱いには気をつかう部分です。

取り外したプジョーリフターのECUをベンチにセット

取り外したECUをベンチ上にセット。作業機器と接続する準備。

FLEXでECUとBENCH接続 プジョーリフター

FLEXでECUと接続。今回はBENCH(ベンチ)接続で、ECU内部のデータに直接アクセスします。

このリフターに載っているECUは、Bosch(ボッシュ)製のMD1CS003というユニットでした。

Bosch MD1CS003 接続完了 SUCCESS

Bosch MD1CS003。接続が無事に完了(SUCCESS)。

接続できたら、まずは今入っているオリジナルのデータをそっくり読み出して、フルバックアップを取ります。

ECUオリジナルデータのフルバックアップ中

オリジナルデータのフルバックアップ中。データは万一に備えて複数箇所に保管します。

読み出したデータをもとに、アドブルー/NOxを撤廃するデータを作成し、車両(ECU)へ書き込んでいきます。この書き込みの工程は、通信エラーが許されない大事なところなので、電源や接続を見ながら静かに進めます。

調整後のデータをECUへ書き込み中 INT FLASH

調整後のデータを書き込み中。

ECU書き込み完了 Write Int Flash Finished

「Write Int Flash Finished」──書き込みも無事に完了。

書き込みが終わったら、ECUを車両に戻して、最終チェックへと進みます。

作業後の結果

車両に戻して診断機で確認し、試運転をしてきました。

作業後のメーター 警告灯すべて消灯 走行距離90686km

作業後のメーター。3つ点いていた警告灯はすべて消灯。走行距離は90,686km。試運転でも問題なし。

あれだけ点いていた警告灯が、嘘のようにすべて消えました。カウントダウン表示も消えて、通常どおり走れる状態に戻っています。

今回の作業まとめ

● 車両:プジョー リフター(2020年式/型式YH01/走行 約90,686km)
● 症状:アドブルー満タンでも警告が消えない+エンジン・整備要求ランプ点灯、残り550kmのカウントダウン
● 検出コード:U1200(CAN通信データが無効)/P20EE(SCR浄化効率が規定値未満)※いずれも一時的
● 作業:Bosch MD1CS003をBENCH接続 → オリジナルデータをフルバックアップ → アドブルー/NOx撤廃プログラムを書き込み
● 結果:警告灯すべて消灯・カウントダウン解除、試運転でも再発なし
● 部品交換に比べて費用を大きく抑えて対応

今回の作業は、故障した部品を新品に交換する「修理」ではなく、ECUのデータを書き換えてシステムそのものを撤廃(無効化)する「調整」にあたります。NOxセンサーにしても、アドブルー関連の部品にしても、かなり高額な上に長期欠品が続いていて、直したくても直せないというのが実情です。それをプログラムで調整してあげる、という位置づけになります。

もし部品側にはっきりとした故障がある場合は、部品が入手できるタイミングで本来の修理をご検討いただくのが望ましい、という点は正直にお伝えしています。当社で施工した車両においては、警告の解除と再発防止まで確認できていますが、クルマの状態は一台ずつ異なります。

また、この分野はまだ発展途上の部分もあり、当社も日々の作業や整備ネットワークの中で情報を更新しながら取り組んでいます。ご依頼にあたっては、こうした前提もあわせてご理解いただけますと幸いです。

ご依頼ありがとうございました。

今回の作業は部品の調達に時間がかかったり、チェックランプ点灯の裏に隠された重大エラーの事などを踏まえた作業となりますので、ご理解いただければ幸いです。

メルセデスベンツ以外でもBMW、フォルクスワーゲン、三菱ふそう(キャンター・ローザ)など商用車を含めて対応可能な場合がありますので、NOxやアドブルーでお困りでしたらお問い合わせお待ちしております。

丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。

重要な補足説明

毎回重ねてお伝えしておりますが、これを「修理」とは言えないと思っています。

NOxにしてもAdBlueにしても、部品はどちらもかなり高額である上に欠品している事が非常に多く、直したくても直せないという状態に陥っている方を非常に多くお見受けしています。

それをプログラムで少し”調整”してあげたり、部品が入荷するまで運用出来ないお車を一部機能に付いてのみ一時的に”撤廃”作業を施して運用出来る様にするというものです。

いま点灯しているエンジンチェックランプの点灯原因・内容が分かってはいるものの、NOxやAdBlueがチェックランプを点灯させ続けている状態では、全く別の重大なトラブルが発生したとしてもドライバーさんは気付く事が出来ません。

なので、過敏に反応する設定となっている”閾値”(いきち)を少しだけ幅を持たせた値に調整する事でエンジンチェックランプの点灯を一時的に抑えることで、それとは全く別で発症した”本当に重大なトラブル”にドライバーさんが早く気付く事が出来るように、本来の意味としての「エンジンチェックランプ」点灯お知らせ機能を取り戻す作業です。

部品が欠品中で納期未定の為車が動かせない(スターターロックが発動してエンジンがかからない)などの場合での、部品が入るまでの一時的な緊急対策措置である事をご理解いただき、部品が入荷した際には元のプログラムに戻して部品を交換するという事を弊社ではお勧めしております。

同作業をご希望される方は、その辺りをご理解下さい。


この技術・情報はまだまだ発展途上の所もあります。

殆どが成功し続けて行く中、それでもごくごく稀にエラーが消えないとか、スターターロックが再発動するとか、そんな事が起こるのがゼロではありません。

この一連の作業内容ができるネットワークは今や10社まで広がり、まだ更に広がる可能性を含んでいます。そしてお互いに情報を共有しつつ、時にはトライ&エラーを続けながら全員で前に進んでいます。

現況では完璧に仕上がった技術では無い事や、もしかするとその「ごく稀」な案件に当たってしまう事もあるかも知れません。不本意ながらご迷惑をおかけしてしまう事だってあると思います。

そんな時こそそのネットワークを駆使し、施工している仲間たちで知恵を絞り出し合って、精一杯対応させて頂きます。全員が本気で取り組んでいますので、暖かい気持ちで見守っていただければ幸いです。

もちろん、その様な事が起こらない様に、日々学び、日々ステップアップし続けていますので、もし「依頼してみたい」と思って頂けた方は、お問い合わせ下さい。


AdBlueの警告でお困りの方へ

「あと数百キロでエンジンがかからなくなる」という警告。その不安を抱えたまま運転するのは、とてもストレスがかかるものです。

ディーラーさんでの高額修理に悩んでいる方も、まずは一度ご相談ください。

お電話でのご相談:048-798-2922

(受付時間 火~土 9:00~18:00)

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