今回のお車はスバル レガシィアウトバック(BS9)、走行距離210,237km。TR580——リニアトロニック(CVT)にAWDを組み合わせた、平成27年式の定番仕様です。

3月下旬のある日の夕方——50km/hほどで走行中に、メーターが一気に騒ぎ出したとのこと。「AT OIL TEMP」が点滅し、続けざまに「電動パーキングブレーキシステム点検」「直ちに停車し販売店へ連絡」「VDCシステム点検」「トランスミッションシステム点検」「販売店で点検を受けてください」……立て続けにこれだけ並べば、誰だってヒヤリとします。

ひとまずなんとか自宅にたどり着いたオーナー様。その日の夜、19時頃——少しオイル温度が下がった状態でエンジンを再始動し、P→R→Dとレンジを切り替えてみたところ、警告表示はどこにも出ない。一見、何事もなかったような状態です。

ただ、「あれだけ鳴ったものを『出てないから大丈夫』と流すのは気持ち悪い」と、茨城県守谷市のオーナー様。ご自身でネットで調べるうちに当店のブログにたどり着き、「原因をはっきりさせて、きちんと直したい」とご連絡いただきました。

入庫の経緯と症状

ご入庫いただいたアウトバックがこちらです。外観は非常にきれいに維持されていて、長く大切に乗ってこられた一台という印象ですね。

スバル レガシィアウトバック BS9 入庫時の車両外観

ご入庫いただいたスバル レガシィアウトバック(BS9)。

まずは入庫時のメーターを確認していきます。

スバル アウトバック BS9 入庫時メーター 走行210,240km

入庫時メーター。走行距離は210,240km

お客様の申告どおり、中央のマルチインフォメーションディスプレイには警告メッセージが次々と切り替わりながら表示される状態。一つずつ見ていきます。

レガシィアウトバック 警告表示「直ちに停車し販売店へ連絡」

「直ちに停車し販売店へ連絡」——走行中に出ると心臓に悪い部類の表示

レガシィアウトバック トランスミッションシステム点検 警告表示

「トランスミッションシステム点検」——今回の本丸に直結する警告

レガシィアウトバック VDCシステム点検 警告表示

「VDCシステム点検」——アンチスキッド制御系の連動警告

このほか「電動パーキングブレーキシステム点検」「販売店で点検を受けてください」も併せて、全部で5種類の警告がローテーションで表示されている状態でした。

そしてここで一つ、お客様が仰っていた「再始動後は警告が出なくなった」という点。じつはこれ、今回のケースを読み解く重要なヒントになっています。順に見ていきましょう。

スバル アウトバック BS9 エンジンルーム 水平対向エンジン FB25

ボンネットを開けたエンジンルーム。水平対向FB25+リニアトロニックCVTの組み合わせ

診断と原因特定

診断機を繋いで、車両全体のシステムをスキャンしていきます。

Autel診断機 スバル アウトバック BS9 全システムスキャン結果

17システム中9システムでDTCを検出。合計25件がずらりと並びました

Autel診断機 故障コード一覧 P0971 圧力制御ソレノイドC系回路

故障コード一覧(1/2)。TCM側の一番上に本命のP0971が入っています

Autel診断機 故障コード一覧 アイサイト・オートライト・シートメモリー

故障コード一覧(2/2)。アイサイト・オートライト・ヘッドライト・シートメモリーなど、他系統にも連鎖DTCがずらり

大量に並んでいて一瞬たじろぎますが、本命はこの一行です。

P0971 圧力制御ソレノイドC系回路(High)

このP0971——スバル車のリニアトロニック(CVT)+AWD構成において「圧力制御ソレノイドC」として登録されているのは、AWDソレノイド(トランスファクラッチ制御用)のことです。TR580では、前輪と後輪への駆動力配分を司る要の部品。これが健全でないと、AT/CVT制御全体が保護側(フェイルセーフ)に倒れるわけです。

「(High)」の意味するところは、その系統の抵抗値が「異常に高い」こと。つまり、電流が正常に流れるべき回路で、想定以上に電気の流れが阻害されている——ソレノイド内部コイルの断線または断線寸前が強く疑われる状態です。

他に並んでいるDTCも整理しておきます。

  • C1431(ABS):トランスミッション異常を受けた二次的なABS側エラー
  • IPC/RKE/BCM系のU系コード(U0100、U0101、U0122、U0128……):通信「データ未着」。TCMが保護動作で一時的に通信を落とした瞬間、周辺システムが「相手の信号が来ない」と記録したもの
  • B2801/B2803/B2809(アイサイト):TCM異常・VDC異常を受けた連鎖エラー
  • B2401、U0122、U1140、B2600、U0230:他系統からの連鎖DTC

つまり、走行中にP0971でTCMが一度保護に入り、その瞬間に車載ネットワークの通信が一時遮断された——その一幕を各システムが「データ未着」として記録した、というのが全体像です。根本原因はP0971ただ一点。他は副産物。

ここで先ほどの「再始動で警告が出なくなる」というお客様の体験談が効いてきます。ソレノイド内部のコイル断線が「完全断線」ではなく、温度や振動で接触状態が変わる不安定なレベルだと、こうした「走行中は出るが駐車して冷えると出ない」挙動になりがちなんですね。現車で警告灯が点いていない状態でも、履歴DTCに明確に刻まれているのはまさにその証拠です。

原因の最短ルートは、コントロールバルブボディを外して、AWDソレノイド単体の抵抗値を実測すること。ここまで来れば間違いないので、作業を進めてまいります。

作業内容

ここで、このTR580の構造上の特徴に少し触れておきます。リニアトロニック(CVT)のバルブボディは、ミッションの上部に配置されているんですね。つまり、一般的な縦置きATのように「ATFを全量抜いて、オイルパンを下ろして……」という工程は不要。エンジンルーム側(車両の上)からダイレクトにバルブボディへアクセスできる——整備性の観点では、かなり合理的な設計です。

作業は、エンジンルーム内の周辺補機類やハーネスを順に避けながらスペースを確保し、バルブボディ上部のカバーを取り外すところから。その後、TCMコネクタや各ソレノイドへの配線を一つずつ丁寧に抜いていきます。

アウトバック BS9 CVT TCMコネクタ周辺 作業開始時

エンジンルーム内、バルブボディ周辺。TCMコネクタや配線を一つずつ外してアクセス経路を確保していきます

アウトバック BS9 取り外したコントロールバルブボディ

取り外したコントロールバルブボディ。複数のソレノイドが並んで装着されています

バルブボディが下りたら、ここからが本題です。テスターでAWDソレノイド回路の抵抗値を実測していきます。

アウトバック BS9 AWDソレノイド 抵抗値29.3Ω 異常値

バルブボディ側コネクタで実測した値は「29.3Ω」。正常値の約8倍の異常値

新品の正常値が3〜4Ω前後であることを踏まえると、29.3Ωは約8倍の異常値。コイル内部は、もう限りなく断線寸前。これが「走行して発熱すると通電が乱れ、冷えると偶然つながる」という間欠症状の正体です。P0971(High)の定義そのものと合致しています。

原因が確定したので、AWDソレノイドを交換していきます。

アウトバック BS9 新旧AWDソレノイド比較

左が取り外した故障ソレノイド。内部に鉄粉やスラッジの付着が見られます。右が新品の対策品

交換後、同じようにバルブボディ側コネクタから抵抗値を再測定します。

アウトバック BS9 新品AWDソレノイド 抵抗値3.7Ω 正常値

新品交換後の抵抗値は「3.7Ω」。本来あるべき正常値に収まりました

故障時29.3Ω → 交換後3.7Ω。数値差は一目瞭然ですね。こうして「Before/After」で数値が揃って出ると、作業の手応えもはっきりします。

そしてここで一点、今回のDTCには出ていないものの、ロックアップソレノイド(P2762・P2763・P2764該当部)も予防的に新品交換しています。

理由はシンプルです。走行210,000km超のリニアトロニックでは、AWDソレノイドに続いてロックアップソレノイドが次に弱点となりやすい部位。どうせバルブボディを開けているこのタイミングで一緒に交換しておけば、数ヶ月〜数年後にP2762系のDTCで再び同じ作業——バルブボディ脱着・ソレノイド交換・AT学習・フルード交換——を繰り返す二度手間の工賃・フルード代・日数が発生しません。

「今出ているDTCの原因」+「この先出やすい場所」をセットで手当てする——これが当店の高走行CVT整備のスタンスです。

バルブボディカバーのガスケットも、脱着した以上は当然新品交換です。

スバル純正 バルブボディカバーガスケット 部品番号3133SAA020

スバル純正 バルブボディカバーガスケット(部品番号:3133SAA020)

仕上げ・確認作業

新品ソレノイド装着後のバルブボディを元通りに組み付け、上部カバー・TCMコネクタ・各ハーネス類もすべて接続していきます。

アウトバック BS9 CVT組付け完了後のエンジンルーム

組付け完了後のCVT周辺。バルブボディカバー・TCMコネクタ・配線類もすべて元通りに接続

続いてAT学習モードの実行。スバルのCVTは、バルブボディやソレノイド周りを触った後に必ず学習作業を行う必要があります。これを省くと、変速フィーリングが決まらなかったり、場合によっては新たなDTCが入るケースもあります。

スバル レガシィアウトバック AT学習モード 正常終了

「AT学習は正常に終了しました」。これで制御側の準備も完了です

最後に履歴DTCをすべてクリアし、試運転へ。街中・幹線道路を十数km走らせて、警告再点灯がないこと、シフトフィーリングに違和感がないことを確認していきます。

アウトバック BS9 修理完了後メーター 警告灯消灯

試運転後のメーター。走行210,253km。警告メッセージはどこにも表示されず、穏やかな通常表示に戻りました

「直ちに停車〜」も「トランスミッションシステム点検」も、嘘のようにすべて消失。

最後に、もう一度診断機を繋いで全システムを再スキャン。目視での警告灯消灯だけでなく、診断機レベルで本当にDTCがクリアされたかを確認しておきます。

Autel診断機 修理後スキャン結果 17システム全てDTC0件

修理後の全システムスキャン結果(4/13実施)。17システムすべて「0」——クリーンな状態

17システム、すべて「0」。修理前は25件ものDTCが並んでいたのが、きれいにリセットされました。これで修理は完了となります。

参考データ・作業内容

  • 車種:スバル レガシィアウトバック
  • 型式:DBA-BS9
  • 年式:平成27年2月
  • ミッション:TR580(リニアトロニック/AWD)
  • 走行距離:210,237km(入庫時)
  • 主要DTC:P0971 圧力制御ソレノイドC系回路(High)
  • 主な作業内容:
    • コントロールバルブボディ脱着(上側アクセス)
    • AWDソレノイド(圧力制御ソレノイドC)単体交換
    • ロックアップソレノイド(P2762・P2763・P2764該当部)予防的新品交換
    • バルブボディカバーガスケット新品交換(スバル純正 3133SAA020)
    • CVTフルード圧送全量交換
    • 履歴DTC消去
    • AT学習モード実行
    • 試運転・警告灯消灯確認
    • 診断機での修理後全システム再スキャン(DTC 0件確認)

ご依頼ありがとうございました。

丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。

急いで作業を行えばヒューマンエラーにもつながりますし、ミスを無くすためにも3日から1週間程度のお時間をいただいております。

どうぞご協力お願いいたします。

● 初めての問い合わせで不安な方
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経験豊富な整備士が適切なアドバイスをいたします、遠慮なさらずにお問い合わせください。

同じ症状でお困りの方へ

「走行中に警告が一気に出たのに、駐車して再始動したら消えた」——こうした間欠的な多重警告は、スバル車のリニアトロニック(CVT)AWD車で発生する代表的なパターンの一つです。ディーラーでは「現車で再現しないと診断できない」と言われがちですが、履歴DTCをきちんと読み解けば原因はしっかり特定可能です。今回のようなP0971(圧力制御ソレノイドC)は、ミッション本体ではなくAWDソレノイド単体の劣化が原因であることがほとんどです。

車種・型式/症状の出る条件(いつ・どんな場面)/警告灯や表示内容/DTC(分かれば)をお知らせいただくとご案内がスムーズです。

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お問い合わせ・ご相談

P0971など、リニアトロニック(CVT)AWDソレノイドの異常でお困りではないですか?

走行中に突然、トランスミッション・VDC・電動パーキングブレーキなどが一気に警告を出すスバル リニアトロニック(CVT)AWD車のトラブルは、CVT本体ではなく内部のAWDソレノイド(圧力制御ソレノイドC)が原因のケースがほとんどです。当社では、高額なミッション載せ替えではなく、ソレノイド単体交換とバルブボディのピンポイント整備で症状を改善します。

お電話でのご相談:048-798-2922

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