
「AT OIL TEMP」の表示が点滅し始めたのは、しばらく前のことだったそうです。
最初は「また出た」と様子を見ていたものの、気づけば加速のもたつきが出始め、燃費もじわじわと悪化。ただ走れないわけではないので、なかなか踏ん切りがつかないまま日々が過ぎていった——そんな状況だったとのこと。
意を決してディーラーへ持ち込むと、返ってきたのは「バルブボディASSY交換」の高額見積もり。「それなら乗り換えを考えた方がいいかもしれない」という言葉もあり、一時は手放す方向で気持ちが傾いていたそうです。
ただ、すぐには諦めきれない。「もう少しだけ調べてみよう」と検索を重ねるうちに当店のブログへたどり着き、「ピンポイント修理をお願いしたい」とご連絡をいただきました。
長野県塩尻市のオーナー様です。ご加入の任意保険に付帯するロードサービスを利用して引き取りに伺いました。
診断と原因特定
入庫後、AUTEL診断機で全システムのスキャンを実施。

Autel診断機によるスキャン結果。TCM(変速機制御システム)に2件のDTCが検出されています
診断機の画面に表示されたのは——
P2762 ロックアップデューティソレノイド誤動作(現在の障害・過去の障害)
ご連絡いただいた時点では走行できていたものの、入庫時にはすでにこの段階まで進行していました。
スバルCVT車で繰り返し見てきたコードです。ロックアップデューティソレノイドは、トルクコンバーター内部でエンジンとミッションを直結する「ロックアップ機構」の制御を担う部品。
ここが誤作動を起こすと、TCU(トランスミッションコントロールユニット)は正確な制御ができなくなり、燃費の悪化や変速フィーリングの乱れとなって現れます。
今回オーナー様が感じていた「加速のもたつき」「燃費の低下」は、まさにその典型です。
メーターの状態を確認すると、「AT OIL TEMP」をはじめ複数の警告灯が点灯。マルチインフォメーションディスプレイにも「トランスミッションシステム点検」「電動パーキングブレーキシステム点検」「直ちに停車し販売店へ連絡」と、立て続けに警告が並んでいました。

入庫時のメーター。AT OIL TEMPほか複数の警告灯が点灯。走行距離は160,405km

「トランスミッションシステム点検」の警告表示

「電動パーキングブレーキシステム点検」の警告表示

「直ちに停車し販売店へ連絡」。かなり強い警告です
「パーキングブレーキまで故障したの?」と驚かれるかもしれませんが、どうぞご安心ください。現代の車は各ユニットが網の目のように通信(CAN通信)でつながっているため、CVTの不具合が引き金となって、一見無関係なシステムの警告灯まで連鎖的に点灯させてしまうのです。
もちろん、大元の原因を解決すればこれらの警告も自然と消えていきます。
ディーラー様では「バルブボディASSY交換」という大きな診断になりがちですが、私たちはまず、部品を一つひとつ取り出し、その「数値」を実測することから始めます。
経験上、ロックアップデューティソレノイドの不具合を疑っていますが、憶測だけで進めることはありません。確かな証拠を掴んでから、最善の修理プランを確定させます。
作業内容
まずATFを抜き取り、オイルパンを外してバルブボディへアクセス。

ドレンボルトを外してATFを排出。経年劣化による変色が見られます

オイルパンを外した状態。バルブボディが露出しています

取り外したバルブボディ。各部をチェックしていきます
問題のロックアップデューティソレノイドをマルチメーターで計測します。

不具合のあるソレノイドの抵抗値は163.5Ω。明らかな異常値です
163.5Ω。
正常値は13.5Ω前後——つまり約12倍の抵抗値です。コイルの内部がほぼ断線しており、TCUがまともな制御信号を送れる状態ではありません。バルブボディASSYごと交換しなくても、原因はこのソレノイド一個に絞り込まれました。数値が出てしまえば、判断は明快です。

新品ソレノイドの抵抗値は13.5Ω。正常な数値です

左が取り外した不良ソレノイド、右が新品。見た目はほぼ同じですが、抵抗値は約12倍の開きがあります
ソレノイドを新品へ交換し、あわせて鉄粉吸着用のマグネットもきれいに清掃しておきます。

コントロールバルブボディ本体もできる限りきれいに洗い流します。

マグネットもキレイ洗浄してオイルパンを元に戻します
続いて、圧送交換機で抜けた分のATFを充填します。

ATF圧送交換機を接続してフルード充填
仕上げ・確認作業
組み付け完了後、診断機でAT学習を実行。新しい部品の状態をTCUに正確に認識させ、変速制御を最適化するための工程です。
学習が正常に終了したことを確認して、試運転へ。
結果は——
加速のもたつきは消え、ロックアップも滑らかにかかるようになりました。燃費の回復もオーナー様ご自身で実感いただけるはずです。「AT OIL TEMP」の点滅はもちろん、警告灯もすべて消灯。

修理完了後のメーター。すべての警告灯が消灯。走行距離は160,419kmを示しています
一時は手放すことも頭をよぎった愛車が、ソレノイド一個の交換でここまで回復する。16万kmは、スバル車にとってはまだまだ通過点。適切なピンポイント修理とATF管理を行えば、20万km、30万kmと元気に走ることができます。
これで修理は完了となります。
参考データ・作業内容
- 車種:スバル レガシィB4
- 型式:DBA-BMG
- 年式:2013年(平成25年)
- 走行距離:約160,419km
- 検出DTC:P2762(ロックアップデューティソレノイド誤動作)
- 作業内容:ロックアップデューティソレノイドバルブ交換 / オイルパンガスケットシーリング / ATF充填 / AT学習実行 / 試運転
ご依頼ありがとうございました。
丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。
急いで作業を行えばヒューマンエラーにもつながりますし、ミスを無くすためにも3日から1週間程度のお時間をいただいております。
どうぞご協力お願いいたします。
● 初めての問い合わせで不安な方
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経験豊富な整備士が適切なアドバイスをいたします、遠慮なさらずにお問い合わせください。
同じ症状でお困りの方へ
「変速ショック」「回転数が高い」「警告灯点滅」などの症状は、ミッション本体の故障と思われがちですが、実際にはセンサーやバルブボディが原因のケースがほとんどです。
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お問い合わせ・ご相談
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