今回のお車はスバル レヴォーグ(VM4)の2020年式。走行距離112,000kmの車両です。神奈川県横浜市にお住まいのお客様で、当店のブログをご覧になりご相談いただいたケースです。

ただこちらのお客様の場合、背景に少し胸が痛くなるような経緯がありました。

昨年10月、走行中にステアリングが突然動かなくなるという怖い経験をされたそうです。近隣のスバルで「ギアボックスの異常が見られる」と言われたものの、エンジン再始動で動いたため自走。翌日ご購入店のスバルに持ち込んだところ、「エラーが消えていて診断できない」とのことで、そのまま3週間放置されて返却されてしまいました。

ところが返却された翌日、100km走行で再び同じ症状が出て緊急入庫。今度は症状が出ていたためすぐに修理となり、費用は38万円かかっています。

そして今回。その修理からわずか2ヶ月後に警告灯が再点灯し、「コントロールバルブの交換が必要」と診断されて見積金額は21万5千円。3ヶ月で合計60万円近い修理費――「10万キロ超えているから仕方ない」という対応にも納得できず、他に方法はないかと当店へご相談いただいたわけです。

車両情報 / ご依頼内容

  • 車種:スバル レヴォーグ
  • 型式:VM4F(2020年式)
  • 走行距離:112,603km
  • 症状:走行中に警告灯が点灯、ディーラーにてコントロールバルブ交換が必要と診断
  • ディーラー見積:21万5千円(コントロールバルブAssy交換)

入庫したレヴォーグVM4

ご入庫いただいたレヴォーグVM4F。走行距離は112,000kmを超えているが外観はきれいな状態

メーター走行距離

メーター表示。走行距離112,603km。この状態で診断を開始

診断と原因特定

まずはAutel診断機で全システムをスキャン。入庫時の状態を確認していきます。

Autel診断レポート 修理前

入庫時のAutel診断レポート。TCM(トランスミッション)に1件のDTCが検出されている

出てきたエラーは――

P0971 圧力制御ソレノイドC系回路(High)

TCM(トランスミッションコントロールユニット)が、圧力制御ソレノイドCの回路に異常を検知した状態です。

このコードが示しているのは、バルブボディ内部にある「AWD圧力制御ソレノイド」の不具合です。スバルのリニアトロニックCVTに搭載されたこの部品は、変速制御とは独立して、前後輪へのトルク配分を司る「トランスファークラッチ(MPT)」への油圧を緻密にコントロールするという、走行性能の根幹を担う重要な役割を持っています。

ここに異常(内部断線や抵抗値の狂い)があると、TCU(トランスミッション・コントロール・ユニット)が意図した通りに後輪へパワーを伝えられなくなり、四輪駆動としての走行性能が正常に機能しなくなります。

ディーラーでは「コントロールバルブAssy(バルブボディごと)の交換が必要」という診断でした。Assyとはつまり、バルブボディ全体を丸ごと交換するということ。部品代だけでも相当な金額になり、工賃を含めると今回の見積もり21万5千円になるわけです。

まず「本当にバルブボディ全体が悪いのか」を確認するところから始めます。バルブボディの中には複数のソレノイドが組み込まれていますが、実際には1本のソレノイドだけが不良というケースも少なくありません。そこを確認せずにAssy交換してしまうのは、部品代の面でも非常にもったいないですしね。

まず確認したいのが、ハーネス(配線)に問題がないかという点です。ソレノイドの不具合に見えても、実は配線側の断線やショートが原因のこともあります。サービスマニュアルの診断フローに沿って、外側から順番に原因を絞り込んでいきます。

診断フロー(P0971)の確認結果

  • ステップ1:ハーネス抵抗値 → 0.3Ω(1Ω未満 = 正常)
  • ステップ2:TCUコネクターとボディアース間の電圧 → 0V(正常)
  • ステップ3:AWDソレノイド(トランスミッション内部側)抵抗値 → 41.8Ω(正常値:2〜4.5Ω)

ハーネスは問題なし。しかしステップ3でトランスミッション側のソレノイド抵抗値を測定すると、41.8Ωという数値が出ました。正常値は冷機時で2〜4.5Ω。これは明らかな異常です。

原因はバルブボディ内部のソレノイド不良で間違いないと判断。作業を進めてまいります。

作業内容

まずはバルブボディの取り外しから。VM4レヴォーグのコントロールバルブボディは上からアクセスします。ATFが冷却した状態で作業することが前提ですので、安全を考慮して車両を十分に冷ましてから作業に入ります。

取り外したバルブボディ

取り外したバルブボディ。複数のソレノイドが組み込まれた精密な部品

さて、バルブボディを取り外したら、問題のソレノイドを特定して抵抗値を測定します。

不良ソレノイド抵抗値94.7Ω

不良ソレノイドの抵抗値測定。94.7Ωと大幅な異常値を示している

測定結果は94.7Ω。正常値の2〜4.5Ωに対して、実に20倍以上の値です。コイル内部が断線に近い状態になっているわけです。これだけの抵抗値になれば、TCUが正常な制御を行えないのは当然ですね。

続いて、問題のソレノイドを取り外していきます。

取り外した不良ソレノイド

バルブボディから取り外した不良ソレノイド。外観上は問題なく見えるが内部が劣化

外観上は汚れているものの見た目では判断がつきません。こういうケースは内部のコイルが劣化して電気抵抗が上昇している状態です。マルチメーターを使った抵抗値測定があってこそ見つけられる不具合といえます。

新品のソレノイドに交換する前に、念のため新品側の抵抗値も確認しておきます。

新品ソレノイド抵抗値3.5Ω

新品ソレノイドの抵抗値は3.5Ω。正常値(2〜4.5Ω)の範囲内で確認

新品の測定値は3.5Ω。正常値範囲内であることを確認できました。

新旧ソレノイド比較

左が新品ソレノイド、右が取り外した不良品。同形状ながら内部コイルの状態が全く異なる

新旧を並べてみると外見はほぼ同一です。こういった電気系部品の劣化は外観では判断できないですしね。だからこそ診断機だけでなく、テスターを使った地道な抵抗値測定が欠かせないわけです。

ソレノイドを新品に交換したら、バルブボディを元に戻していきます。ガスケットも新品に交換して組み付けます。

新品ガスケットとバルブボディ取り付け前

新品ガスケットを準備。バルブボディ取り付け前の状態

レヴォーグ BOXER DIT エンジンルーム

組み付け完了後のエンジンルーム。BOXER DITエンジンと組み合わされるCVTの心臓部を修復

仕上げ・確認作業

バルブボディ交換後は、ATF交換とAT学習モードの実行が必要です。

AT(CVT)はTCUが変速タイミングや油圧制御の特性を学習しながら動作しています。今回のような部品交換のあとにその学習データをリセット・再学習させることで、新しい部品に最適化した制御が行えるようになります。

AT学習モード開始前の準備画面

AT学習モード開始前の確認画面。ヘッドライト・エアコンなど電気負荷をOFFにするよう指示が表示される

AT学習モード エンジン始動後

エンジン始動後のAT学習モード画面。アイサイト付き車はプリクラッシュ機能をOFFにする必要がある

各条件を整えてAT学習を実行。しばらく待ちます。

AT学習正常終了

「AT学習は正常に終了しました」の表示。これで学習完了

AT学習も問題なく完了しました。

仕上げに再度Autel診断機でフルスキャンを実施して、エラーが残っていないことを確認します。

修理後の診断レポート 故障コード0

修理後の診断レポート。全19システムのDTCが0件。完全にクリアされた状態を確認

結果は――

全システムのDTCが0件。入庫時に検出されていたP0971も含め、すべてのエラーが解消されました。試運転でも変速フィーリングに問題はなく、修理は完了となります。

参考データ・作業内容

  • 車種:スバル レヴォーグ VM4F(2020年式)
  • 走行距離:112,603km
  • 検出DTC:P0971 圧力制御ソレノイドC系回路(High)
  • 不良ソレノイド抵抗値:94.7Ω(正常値 2〜4.5Ω)
  • 新品ソレノイド抵抗値:3.5Ω
  • 作業内容:
    1. 全システム診断スキャン
    2. ハーネス・配線チェック(診断フローに従い実施)
    3. バルブボディ取り外し
    4. 圧力制御ソレノイドC交換
    5. ガスケット交換(品番:31338AA070)
    6. バルブボディ組み付け
    7. AT学習モード実行・完了確認
    8. フルスキャン再確認(DTC 0件確認)
    9. 試運転

ご依頼ありがとうございました。

丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。

急いで作業を行えばヒューマンエラーにもつながりますし、ミスを無くすためにも3日から1週間程度のお時間をいただいております。

どうぞご協力お願いいたします。

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経験豊富な整備士が適切なアドバイスをいたします、遠慮なさらずにお問い合わせください。

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