最近すごく多くいただくご相談があります。それが、プジョー リフター(Peugeot Rifter)でのAdBlue(尿素SCR)システムのトラブルです。

整備入庫したプジョー リフター AdBlue故障修理
今回ご入庫いただいたプジョー リフター。デザインもよくて使い勝手も最高な車ですがAdBlueシステムに弱点を持っています。

低燃費で力強い走りが魅力のクリーンディーゼル車ですが、オーナー様にとって一番の悩みどころになっているのがこの排ガス浄化システムです。ある日とつぜん、警告音とともにメーター内にいろんなランプが点灯して、こんな状況になってしまうケースがあとを絶ちません。

  • 「UREA」警告灯が点きっぱなし、または点滅する
  • 「あとXXX kmでエンジン始動不可」というカウントダウン表示がはじまる
  • ディーラーでの診断結果が「AdBlueタンク交換」となり、20〜30万円の高い見積もりが出される

いまこの記事を読んでいるオーナー様も、まさに同じような状況になって解決策を探していることと思います。

当社に入庫したリフターの実車データをもとに、AdBlueシステム故障の原因、そして「高額なタンク交換をしないで修理する解決策」について事例を交えて説明いたします。

なお、兄弟車であるシトロエン ベルランゴや、オペル コンボライフに乗っている方にとっても同じ内容になりますので、参考にしてください。

1. 恐怖のカウントダウン…リフターによくある症状

リフターに載っている1.5L BlueHDiエンジンはとても優秀ですが、排ガス浄化装置(AdBlueシステム)に関しては、デリケートな管理が必要です。

よくある故障の初期症状として、以下の警告灯がいっせいに点灯します。

  • UREA(尿素)警告灯
  • SERVICE ランプ
  • エンジンチェックランプ

さらに、インフォメーション画面にはこんなメッセージが表示されます。
「Emission control fault: Starting impossible in 400 km」

プジョー リフター UREA警告灯とエンジン始動不可カウントダウン表示
実際の警告画面です。「Starting impossible in 400 km(あと400kmで始動不可)」という怖いカウントダウンが表示されています。

これは車側からの「最後通告」です。このカウントダウン機能は残り距離が0kmになってエンジンを止めると、専用テスターでリセットしないかぎり再始動ができなくなります。

「AdBlueを補充すれば警告は消えるんじゃない?」と聞かれることも多いですが、システム自体が壊れている場合、補充をしても警告灯は消えません。むしろ、タンクの中のセンサーが誤検知を起こして、状況を悪くしてしまうこともあるので注意が必要です。

2. なぜ壊れるのか?AdBlueタンクの構造的な弱点

なぜリフターのAdBlueシステムはこれほど故障が多いのでしょうか。整備士としての見解は、「部品の構造(アッセンブリー化)」に根本的な原因があると考えています。

リフターのAdBlueタンクは、ただの入れ物ではありません。

  1. タンク本体
  2. 供給ポンプ(液体を送る心臓部)
  3. ヒーター(凍結防止)
  4. レベルセンサー(残量検知)
  5. 制御基板(コントロールユニット)

これら全ての部品が一体化されて、分解できないプラスチックケースに密閉されています(サプライユニット/タンクAssy)。

尿素の結晶化による固着

AdBlue(尿素水)は、乾燥すると白い結晶として固まる性質を持っています。エンジン停止後、配管内のAdBlueをタンクへ戻す制御がおこなわれますが、完全に排出されなかった尿素がポンプ内部やインジェクターで結晶化し、固着を引き起こすことが主な故障原因です。

「部分修理」ができない構造

例えば「ポンプの圧力が弱い」「ヒーターが切れた」といった単体の不具合であっても、構造上、部品ごとの交換修理ができません。メーカーからの部品供給は「タンクAssy(一式)」のみとなるため、部品代だけで15万円以上、工賃を含めると20万円を超える高い修理になってしまうんです。

3. 診断機で確認!よくある故障コード(DTC)解説

入庫後には診断機を使って車のコンピューター(各コントロールユニット)に記録されたエラー内容をチェックします。

診断機による故障コード P20EE P208E の確認
今回の車両の診断画面です。上から2番目に「P20EE:92 NOx還元システムの浄化性能不適合」が確認できます。

リフターでよく出る故障コード(DTC)は以下の通りです。

P20EE:NOx触媒の浄化効率低下

SCR触媒が期待どおりにNOx(窒素酸化物)を浄化できていない状態を示します。インジェクターの詰まりや、AdBlueの噴射量不足が原因であるケースが多く見受けられます。写真の事例もこのコードが入っていました。

P208E:噴射弁の固着

AdBlueをマフラー内に噴射する「インジェクター」が、結晶化によって動かなくなっている状態です。噴射がおこなわれないため、ポンプに過度な負荷がかかります。

P20F6 / P218F:ポンプ制御性能異常

ポンプを作動させても規定の圧力にならない、あるいは異常に高い圧力になっている状態です。ポンプ内部の機械的な故障が疑われます。

4. ディーラー修理 vs Auto Planetのご提案

警告灯が点いたときの対応策として、大きく分けて2つの選択肢があります。


パターンA:正規ディーラーでの新品交換

  • 内容:AdBlueタンクAssyおよび関連部品の新品交換。
  • 費用:約20〜30万円程度。
  • メリット:メーカー保証期間内であれば無償対応が可能。完全に純正仕様に戻る。
  • デメリット:高額な費用負担。そして最大のリスクは、「新品に交換しても構造的な対策がされていないため、数年後に再発する可能性がある」という点です。

パターンB:当社の「AdBlue撤廃」修理(推奨)

  • 内容:車両ECUのプログラムを書き換え、AdBlueシステム自体を無効化する。
  • 費用:タンク交換の半額以下
    (※詳細はお問い合わせください)。
  • メリット:今後、AdBlue関連の故障再発を完全に防ぐことができる。尿素水の補充管理がいらなくなる。
  • デメリット:正規ディーラーでの一部サービス入庫を断られる可能性がある。

5. 根本解決!「AdBlue撤廃プログラム」という選択肢

全国からのお問い合わせが急増しているのが、この「撤廃プログラム(NOxシステム無効化)」です。これは物理的にタンクを取り外すのではなく、ECU内部のデータを編集することで対応します。

プジョー リフター ECUデータのAdBlue撤廃プログラム編集作業
ECUを取り外し、専用機器をつないでプログラムの読み出し・書き換えをおこなっている様子です。

具体的には、コンピューターに対して「この車にはAdBlueシステムは付いていませんよ」と認識させるようなプログラミング処理をおこないます。

【施工による変化】

  1. 警告灯の消灯(UREA、SERVICE、エンジンチェックランプ全て)
  2. カウントダウンの解除(通常どおり走行可能になります)
  3. AdBlue消費の停止(システム停止にともない、補充がいらなくなります)
  4. 走行性能の維持(エンジン出力、燃費、変速タイミングなどは変わりません)

欧州などでは、保証期間が終わった車の維持費をおさえるためのメンテナンス手法として一おこなわれていることが多いです

6. 実際の修理事例:入庫から完治まで

今回のリフターにおける実際の作業工程をご紹介します。

【手順1:ECUデータのバックアップ】

まず、専用機器を使って車両のECUから現在のデータを完全にバックアップします。万が一の事態にそなえ、元の状態に戻せる体制を整えます。

ECUデータの完全バックアップ作業
「Save ECU File」。作業前にはかならず全データのバックアップを取ります。

【手順2:プログラムの解析・編集】

読み出したデータの中から、SCR(選択触媒還元)システムに関連するマップデータを特定し、最適化をおこないます。

ECU内部フラッシュメモリデータの読み出し
内部フラッシュメモリのデータを解析して編集をおこなっている様子です。

【手順3:編集データの書き込み】

編集が完了したデータを、再度車両のECUにインストールします。

編集済みAdBlue無効化データの書き込み
「Writing…」修正プログラムを車両にインストールしています。

【手順4:物理的な処置と最終確認】

プログラム変更後、プジョーやシトロエン、オペルなどの一部モデルでは、ECU交換後の流れを正しく踏まないままエンジン始動を繰り返すと、スターターだけ回ってかからなかったり、BCM等のユニットを傷めてしまうことがありますので注意が必要です。

AdBlue修理完了後 警告灯が消灯したメーターパネル
こちらが作業後のメーターパネルです。全ての警告灯が消えて、正常な状態に戻りました。

試運転をおこない、エラーの再発がないこと、エンジンの吹け上がりや走行フィーリングに違和感がないことを確認し、ご納車となります。

7. ベルランゴ、コンボライフのオーナー様へ:システムは共通です

この記事では「プジョー リフター」をメインに解説していますが、兄弟車であるシトロエン ベルランゴ(Citroën Berlingo)オペル コンボライフ(Opel Combo Life)に乗っている方についても、まったく同じ内容になります。

メーカーブランドは違いますが、載っているエンジン(1.5L BlueHDi)およびAdBlueシステム、タンクの構造は共通です。したがって、発生する故障コード(P20EE等)や、当店での修理対応(撤廃プログラム)も適用可能です。

当社ではベルランゴやコンボライフの入庫実績もたくさんあります。「シトロエンのディーラーで見積もりが高かった」「オペルの部品供給に時間がかかると言われた」といった悩みを持っている方も、車種の違いを気にせずにお気軽にご相談ください。

8. まとめ:愛車を手放す前にご相談ください

ディーラーさんが提案する「新品交換」だけが唯一の正解ではありません。「適正なコストで修理し安心して長く乗り続ける」ための選択肢もございます。

  • ・UREAランプが点いた
  • ・カウントダウン表示がはじまった

そのような時はカウントダウンが0になる前に、まずは当店までご連絡ください。柔軟に対応させていただきます。


ご依頼ありがとうございました。
今回の作業は部品の調達に時間がかかったり、チェックランプ点灯の裏に隠された重大エラーの事などを踏まえた作業となりますので、ご理解いただければ幸いです。
メルセデスベンツ以外でもBMWやフォルクスワーゲンなども対応可能な場合がありますので、NOxやアドブルーでお困りでしたらお問い合わせお待ちしております。
丁寧な整備を心がけておりますので、ひとつひとつの作業にどうしても時間がかかってしまいます。

急いで作業を行えばヒューマンエラーにもつながりますし、ミスを無くすためにも1~2週間程度のお時間をいただいております。

どうぞご協力お願いいたします。

● 初めての問い合わせで不安な方
● 車の修理をしたいけど迷っている方
● どこのお店に依頼していいかわからない方

経験豊富な整備士が適切なアドバイスをいたします、遠慮なさらずにお問い合わせください。
毎回重ねてお伝えしておりますが、これを「修理」とは言えないと思っています。
NOxにしてもAdBlueにしても、部品はどちらもかなり高額である上に欠品している事が非常に多く、直したくても直せないという状態に陥っている方を非常に多くお見受けしています。
それをプログラムで少し”調整”してあげたり、部品が入荷するまで運用出来ないお車を一部機能に付いてのみ一時的に”撤廃”作業を施して運用出来る様にするというものです。
いま点灯しているエンジンチェックランプの点灯原因・内容が分かってはいるものの、NOxやAdBlueがチェックランプを点灯させ続けている状態では、全く別の重大なトラブルが発生したとしてもドライバーさんは気付く事が出来ません。
なので、過敏に反応する設定となっている”閾値”いきちを少しだけ幅を持たせた値に調整にする事でエンジンチェックランプの点灯を一時的に抑えることで、それとは全く別で発症した”本当に重大なトラブル”にドライバーさんが早く気付く事が出来るように、本来の意味としての「エンジンチェックランプ」点灯お知らせ機能を取り戻す作業です。
部品が欠品中で納期未定の為車が動かせない(スターターロックが発動してエンジンがかからない)などの場合での、部品が入るまでの一時的な緊急対策措置である事をご理解いただき、部品が入荷した際には元のプログラムに戻して部品を交換するという事を弊社ではお勧めしております。
同作業をご希望される方は、その辺りをご理解下さい。
この技術・情報はまだまだ発展途上の所もあります。
殆どが成功し続けて行く中、それでもごくごく稀にエラーが消えないとか、スターターロックが再発動するとか、そんな事が起こるのがゼロではありません。
この一連の作業内容ができるネットワークは今や10社まで広がり、まだ更に広がる可能性を含んでいます。そしてお互いに情報を共有しつつ、時にはトライ&エラーを続けながら全員で前に進んでいます。
現況では完璧に仕上がった技術では無い事や、もしかするとその「ごく稀」な案件に当たってしまう事もあるかも知れません。不本意ながらご迷惑をおかけしてしまう事だってあると思います。
そんな時こそそのネットワークを駆使し、施工している仲間たちで知恵を絞り出し合って、精一杯対応させて頂きます。全員が本気で取り組んでいますので、暖かい気持ちで見守っていただければ幸いです。
もちろん、その様な事が起こらない様に、日々学び、日々ステップアップし続けていますので、もし「依頼してみたい」と思って頂けた方は、お問い合わせ下さい。

参考データ・主な作業内容

プジョー リフター
施工時走行距離: 5,600 キロ

・アドブルー調整/NOxセンサー鈍感化プログラムインストール

お問い合わせ・ご相談

オートプラネット(Auto Planet)

  • 電話:
    048-798-2922
  • Web:
    お問い合わせはこちら
  • 対応車種: プジョー リフター、シトロエン ベルランゴ、オペル コンボライフ等
    (他メーカーの輸入車ディーゼルもご相談ください)

※お問い合わせの際は「ブログのリフターの記事を見た」とお伝えいただくとスムーズです。

修理のお見積もり後、もし金額面でお乗り換えをご検討される場合は
故障した状態のままでも当店で買取が可能です。

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故障トラブルでお困りの方へ
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※ご加入されている保険内容により変わりますので、
お手元に保険証券をご用意いただき、必ず事前にご相談ください。

この記事を書いている人

オートプラネット篠塚真介

オートプラネット篠塚真介

埼玉にあるオートプラネットで働くメカニック。
日々、大好きな整備や修理に明け暮れていて、とても充実しています。仕入先でみつけた素敵なクルマや整備・修理の内容を、自分のか細い語彙力で紹介していきます。
何ごとにも探求心のある人に憧れる。