
三菱ふそう キャンター(4P10ディーゼルエンジン搭載車)。
「またエンジンチェックランプが点いた…」
「修理見積もりが30万、50万と言われて頭を抱えている」
「ディーラーで直したばかりなのに数ヶ月で同じエラーが出た」
そんな悲鳴に近いご相談が、当店には連日寄せられています。
ご入庫いただいたキャンターも、まさにその「終わらないAdBlueトラブル」に見舞われた1台でした。
今回は、部品交換だけに頼るのではなく、車両の中枢であるECUを調整することで、AdBlueシステムの過敏な反応を落ち着かせ、警告の原因を根本から整える作業をご紹介します。
1. 入庫車両の紹介とトラブル状況
まずは、今回ご依頼いただいた車両の状況です。

入庫いただいた三菱ふそう・キャンター。外観は綺麗ですが、メーターパネルには深刻な警告が出ていました。
- 車種: 三菱ふそう キャンター(BlueTec)
- 症状: エンジンチェックランプ点灯、AdBlueシステムの警告表示
- 現状: 走行は可能だが、いつ出力制限がかかってもおかしくない状態
運転席に座ってエンジンを始動すると、メーターパネルにはいくつもの警告表示が出ており、オーナー様が不安を感じてしまう状況になっていました。

【施工前】メーターパネルの様子。中央にオレンジ色の「エンジンチェックランプ」、右下に「AdBlue警告灯」が点灯しています。
警告が続くと、精神的にも落ち着かないうえに、状況によっては「再始動禁止」が発動してしまい、エンジンがかからなくなることがあります。
お仕事でお使いのトラックでは、非常に困る事態です。
2. 純正診断機による精密検査
警告灯だけを消してしまうだけでは、根本的な解決にはつながりません。
まずは専用診断機「XENTRY」を使い、車両が今どんな状態になっているのかを丁寧に読み取ります。

純正診断機XENTRYでの診断画面。「NOxセンサの排出ガス値が高すぎます」というエラーコード(210D12 / 6EF1FF)が確認できます。
診断機のデータには「NOxセンサーが高い排出ガス値を検出しています」という内容が明確に記録されていました。
一般的なOBD診断機だと「P229F」「P2200」と出る部分ですが、専用機ではより細かな内部情報まで把握できます。
さらに、ライブデータを見ながらセンサーが正常に動いているかもチェックします。

ライブデータ画面。青枠内の「NOx値(実測値)」が「-1-」となっており、センサーが正常な数値を送信していないことがわかります。
本来であれば、エンジン回転に応じてNOxの値は上下に動くものですが、今回の車両では「-!-」という異常値のまま変化せず止まっている状態でした。 このため車両コンピューター(ECU)が「排ガス浄化装置に問題がある」と判断し、各種警告を点灯させていたと考えられます。
通常、このような状況に対しては「NOxセンサーの交換」が一般的な整備提案になります。 しかしキャンターのNOxセンサーは1個あたり数万円〜十万円近い高額部品で、さらに日本の運行環境(渋滞・短距離配送・アイドリング多め)では、交換後も短期間で再発してしまうケースが少なくありません。
そこで今回は、お客様のご希望により、根本的な誤判定を抑えるための「AdBlueシステムの無効化・判定ロジック調整」という対策を選択されました。
3. ECU書き換え(AdBlue撤廃)の施工プロセス
ここから先が、私たちの得意とする部分になります。
AdBlue無効化といっても、カプラーを抜いて終わり…という簡易的なものではありません。車両の頭脳であるECUのプログラムを丁寧に調整し、システムを安全に制御するための専門的な作業です。
Step 1:ECUの取り出しとベンチ接続
まず車両からECUを取り外し、作業用のデスクで専用ツールに接続します。

ECUプログラミングの作業風景。車両から取り外したECU(Bosch製)に、特殊なピン配列でツールを接続します。
今回使用する「MagicMotorsport Flex」は、ECUチューニング分野で非常に評価の高い専用ツールです。ECUに直接アクセスし安定した通信経路を確保したうえで、プログラムの読み書きを正確に行います。
Step 2:純正データのバックアップ
作業の前に、必ず現在のデータを「フルバックアップ」します。

PC画面。「READING FULL BACKUP」と表示され、車両の全データを安全に保存しています。
この方法なら、もしもの時や将来的に売却される場合でも、元の状態にいつでも復元できます。バックアップがしっかり取れているという安心感を持っていただけるのも、この作業の大きなメリットです。
Step 3:プログラムの編集と書き込み
解析したデータから、AdBlue関連の制御(NOxセンサーの監視・尿素噴射量・ヒーター動作など)の部分だけを選んで調整します。
エンジンそのものの燃焼設定には触れないため、黒煙が増えたり、走りが悪くなるといった変化はありません。
編集したデータを、再びECUに書き込みます。

編集済みデータの書き込み中(Writing Int Flash)。高度な演算処理を行いながら、慎重にデータを転送します。

書き込み完了。「SUCCESS」の文字が表示され、無事にプログラムの変更が完了しました。
この作業が完了した段階で、ECUは「AdBlueまわりの監視は必要ない」という判断に更新され、過敏な警告が出ない状態になります。
Step 4:物理的な処置
プログラム側の処理が完了したら、ECUを元の位置に取り付けます。そのうえで、車種に応じてAdBlueコントロールユニットや各センサーのカプラーを外し、最終的な制御の切り替えを行います。

車体側面に設置されているECU。静電気に注意しながら取り付けます。また車種別にAdBlueコントロールユニット等のカプラーを外します。
この処理によって、センサー側の細かな変動にECUが過敏に反応しない設定となり、安定した制御が維持されます。最終工程としてより信頼性の高い状態へ仕上げています。
4. 施工後の結果:警告灯ゼロの快適な状態へ
にぎやかに並んでいた警告灯たち…果たして今はどうなっているでしょうか。

【施工後】エンジン始動中のメーターパネル。チェックランプもAdBlue警告も完全に消灯し、DPFレベルも正常に表示されています。
ご覧ください。警告灯はすべて消えています。
DPF機能はそのまま生きているので、DPFレベルの表示も通常どおり、自動再生も問題ありません。
試乗ではエンジンの吹けも軽く黒煙が出るような様子もありませんでした。
加えて診断機で再確認したところ、エラーコードもゼロで、車両システム全体が正常に動作していることを確認できました。
まとめ:コスト削減と安心を手に入れる選択
今回は、三菱ふそう・キャンターのAdBlue無効化施工についてご紹介しました。
AdBlueシステムのトラブルは、一度解決しても再発するケースが多く、そのたびに高額な修理費や車両の停止といった大きな負担が発生します。運送業のお客様にとっては、避けたい出費とダウンタイムです。
当店のECU調整では、
- 尿素水の補充が不要(ランニングコストの軽減)
- センサー修理が不要(高額メンテナンスの回避)
- 再始動禁止のリスクを回避(日常の安心確保)
こうしたメリットを一度に得ることができます。
「見積もりが高くて乗り続けるか迷っている」
「できるだけ費用を抑えて、安定して使える状態にしたい」
そのようなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
車両をお持ち込みいただく方法のほか、遠方のお客様にはECU単体の郵送施工にも対応しています。
急いで作業を行えばヒューマンエラーにもつながりますし、ミスを無くすためにも1~2週間程度のお時間をいただいております。
● 初めての問い合わせで不安な方
● 車の修理をしたいけど迷っている方
● どこのお店に依頼していいかわからない方
参考データ・主な作業内容
三菱FUSO キャンター (FEB50)
施工時走行距離: 8,600 キロ
・アドブルー調整/NOxセンサー鈍感化プログラムインストール
お問い合わせ・ご相談
[オートプラネット / 店舗名]
- 電話: 048-798-2922
- Web: お問い合わせはこちら
- 対応車種: キャンター、アトラス等、他メーカーも相談可
※お問い合わせの際は「ブログのキャンターの記事を見た」とお伝えいただくとスムーズです。
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お手元に保険証券をご用意いただき、必ず事前にご相談ください。
この記事を書いている人

オートプラネット篠塚真介
埼玉にあるオートプラネットで働くメカニック。
日々、大好きな整備や修理に明け暮れていて、とても充実しています。仕入先でみつけた素敵なクルマや整備・修理の内容を、自分のか細い語彙力で紹介していきます。
何ごとにも探求心のある人に憧れる。

